道尾秀介のデビュー作から最新刊まで、全作品を出版順にまとめた完全網羅リストです。「真備」「カラスの親指」などの人気シリーズの読む順番や、長編・短編集などの分類も分かりやすく表示しています。

あわせて読みたい

当サイトで紹介している作家さんは下のリンク先でまとめています。

道尾秀介のシリーズ作品一覧

真備シリーズ(4作)

  1. 『背の眼 上』
  2. 『背の眼 下』
  3. 『骸の爪』
  4. 『花と流れ星』

カラスの親指シリーズ(2作)

  1. 『カラスの親指 by rule of CROW’s thumb』
  2. 『カエルの小指 : a murder of crows』

花シリーズ(2作)

  1. 『光媒の花』
  2. 『鏡の花』

神シリーズ(3作)

  1. 『龍神の雨』
  2. 『風神の手』
  3. 『雷神』

いけないシリーズ(2作)

  1. 『いけない』
  2. 『いけない2』

道尾秀介のノンシリーズ(単発)作品一覧(刊行順)

向日葵の咲かない夏

向日葵の咲かない夏

向日葵の咲かない夏 <新潮文庫>

発売日:2008年7月29日

長編

夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれて欠席した同級生Sの家を訪ねた僕は、彼が首を吊って死んでいるのを発見する。慌てて学校へ知らせに戻るが、再び家へ来たときには遺体が消え、事件そのものが曖昧にされてしまう。一週間後、Sは以前とは異なる姿で僕の前に現れ、「自分は殺された」と訴えた。僕は幼い妹のミカとともに、友人の死の理由と消えた遺体を調べ始める。証言を集めるほど日常の景色は歪み、身近な大人や子どもたちの言葉にも別の意味がにじむ。少年の視点で進むひと夏の探索を通じ、喪失、孤独、家族への思いが幾重にも反転していく。現実と幻想の境を揺さぶりながら、読む者の記憶と理解まで問い直す長編ミステリー。

シャドウ

シャドウ

シャドウ <創元推理文庫>

発売日:2009年8月20日

長編

小学五年生の我茂凰介は、母を病気で亡くしたばかりだった。死について交わした最後の会話を胸に、父と二人で暮らし始めるが、数日後、幼なじみの亜紀の母が自ら命を絶つ。さらに周囲では不幸が重なり、親しかった二つの家族の関係にも、凰介の知らない影が差していく。なぜ大人たちは真実を隠すのか。母が残した言葉は何を意味していたのか。凰介は子どもなりの観察と推理で出来事をつなぎ、自分を守ってきた記憶さえ疑い始める。家族への愛情と罪悪感、心の傷をめぐる秘密が、見る角度を変えるたびに別の姿を現す。少年の切実な問いを軸に、人が現実を受け止めるためにつくる心の「影」を描き、最後まで認識を揺さぶる心理ミステリー。

片眼の猿

片眼の猿

片眼の猿 <新潮文庫>

発売日:2009年6月27日

長編

盗聴を得意とする私立探偵の三梨は、楽器メーカーから産業スパイの調査を依頼される。耳を澄ませて会話を拾い、わずかな音から相手の動きを読む彼は、同じ現場で働く女性・冬絵と出会う。自分と共通する特徴を持つ彼女に惹かれ、助手として迎えた矢先、調査先で殺人事件が発生。二人は否応なくその渦中へ引き込まれていく。誰が企業秘密を盗み、なぜ人を殺したのか。音だけを頼りに組み立てた推理は、見えない部分を想像するほど危うさを増していく。三梨と冬絵が抱える身体と過去の秘密、孤独な者たちが集う場所の意味も事件に重なり、表面の印象は次々と反転する。聞くことと見ることのずれを巧みに使い、人を形づくるものは何かを問う長編ミステリー。

ソロモンの犬

ソロモンの犬

ソロモンの犬 <文春文庫>

発売日:2010年3月10日

長編

大学生の秋内、京也、ひろ子、智佳は、気心の知れた仲間だった。ところが、彼らがかわいがっていた少年・陽介が、飼い犬に引きずられるようにして車にはねられ、命を落とす。事故に見えた出来事だが、秋内は直前の友人たちの振る舞いに不自然さを覚え、疑念を拭えない。犬はなぜ突然走り出したのか。陽介の死は本当に偶然だったのか。秋内は動物生態学を研究する准教授・間宮を訪ね、犬の行動から当時の状況を考え直していく。親密だった若者たちの間に隠された感情や小さな嘘が浮かぶにつれ、友情の輪郭も揺らぎ始める。一匹の犬をめぐる疑問から、人の言葉と本能、守りたい相手への思いを掘り下げ、青春の痛みと謎解きを重ねたミステリー。

ラットマン

ラットマン

ラットマン <光文社文庫>

発売日:2010年7月8日

長編

十四年間続くアマチュアバンドでギターを弾く姫川亮。気心の知れた仲間たちと練習を重ねてきたはずの日常は、スタジオで一人の女性が死んでいるのが見つかったことから崩れ始める。彼女は亮と深い関わりを持ち、その直前には激しい言い争いもあった。事故か、自死か、それとも殺人か。閉ざされた練習場所にいたメンバーへ疑いが向き、長い付き合いの陰に隠れていた感情や秘密が少しずつ露わになる。亮自身も、幼い頃に刻まれた忘れ難い記憶と向き合わざるを得ない。題名の「ラットマン」が示す錯視のように、同じ出来事は見方によって別の像を結ぶ。過去と現在、家族と仲間をめぐる複数の手掛かりが響き合い、人の思い込みが生む死角を突く長編ミステリー。

鬼の跫音

鬼の跫音

鬼の跫音 <角川文庫>

発売日:2011年11月25日

短編集

暗い情念と、逃れられない過去を描く六編の短編集。各編には「S」と呼ばれる人物が現れるものの、その姿も立場も同じではない。愛する相手を思う気持ちは執着へ変わり、善意からついた嘘は取り返しのつかない影を落とす。静かな日常に生じた小さな違和感が、疑い、罪、恐怖を呼び込み、登場人物を思いもよらない場所へ追い込んでいく。カラスの羽音や足跡のような不吉な像が物語を横切り、誰かに見られている感覚を残す。なぜ人は秘密を守り、誤った選択にすがるのか。人間の弱さと切実さを、簡潔で研ぎ澄まされた謎の中に封じ込めた作品集。独立した物語を読むたび、題名にある「鬼」が外から来るものなのか、自分の内に生まれるものなのかが揺らいでいく。

球体の蛇

球体の蛇

球体の蛇 <角川文庫>

発売日:2012年12月25日

長編

十七歳の少年は、幼なじみの死に関わる秘密を胸に抱え、年上の女性へ強く惹かれている。忘れたい過去と、相手を守りたいという思いの間で揺れながら、彼は真実を語る代わりに、小さな嘘を重ねていく。だが、善意から選んだ言葉も、受け取る側には別の意味を持ち、やがて人間関係を取り返しのつかない方向へ動かしてしまう。彼女が隠しているものは何か。あの日の死をめぐる記憶は正しいのか。球体の内側をなぞる蛇のように、出来事は出口の見えない輪を描き、現在と過去が互いを追い続ける。未熟さゆえの純粋さと残酷さ、愛情と自己欺瞞が絡み合い、ひとつの行為が別の悲劇を呼ぶ過程を描く。静かな語りの底で緊張が増し、読者の判断まで揺さぶる青春心理ミステリー。

プロムナード

プロムナード

プロムナード <文春文庫>

発売日:2014年7月10日

小説家になるまでの歩み、心に残る映画や本、かつて好きだった女の子の記憶、仕事場での出来事や家族との日常。作家・道尾秀介が約六年にわたり各媒体へ綴った文章をまとめた、初のエッセイ集。物語を生み出す発想はどこから来るのか、日々出会う人や言葉がどのように創作へ入り込むのかを、率直さとユーモアを交えて語る。ミステリー作品の緻密な仕掛けとは異なり、ここで見えるのは、驚き、迷い、ときに立ち止まる一人の生活者の姿。身近な風景から思いがけない連想を広げる視線や、好きなものを語る楽しさが、一編ごとに浮かび上がる。作品世界の背景を知りたい読者にも、肩の力を抜いて言葉を味わいたい人にも向く、散歩道のような文章集。

月の恋人 Moon Lovers

月の恋人 Moon Lovers

月の恋人 Moon Lovers <新潮文庫>

発売日:2013年2月28日

長編

仕事も恋人との関係もうまくいかず、行き場を失った弥生は上海へ向かう。そこで出会ったのは、高級家具メーカー「レゴリス」を率いる若き社長・葉月蓮介。目的のためには手段を選ばない冷徹さと、人を引きつける強さを併せ持つ男だった。蓮介は現地で見つけた美しい女性シュウメイを広告の顔にしようとするが、彼女は申し出を拒み、三人の思いは仕事と恋愛の間で複雑に絡み合う。欲しいものを手に入れるため、人はどこまで自分を変えられるのか。成功を追い続ける蓮介と、新たな人生を探す女性たちは、互いの選択によって価値観を揺さぶられていく。華やかな家具業界と急速に変わる上海を背景に、愛することと働くこと、失敗から立ち上がる力を描く恋愛小説。

月と蟹

月と蟹

月と蟹 <文春文庫>

発売日:2013年7月10日

長編

海辺の町で暮らす小学生たちは、それぞれ家庭や学校に居場所のなさを抱えていた。ある日、彼らは小さなヤドカリを神に見立て、願いをかなえるための遊びを始める。最初は秘密を共有するだけの無邪気な儀式だったが、願いが切実になるにつれ、ルールは次第に残酷さを帯びていく。友だちを独占したい気持ち、親への反発、仲間から外される恐怖。言葉にできない感情が、子どもたちの間で誤解と疑いを膨らませていく。月明かりの下、彼らは何を願い、その代わりに何を差し出そうとするのか。大人には見えにくい子どもの世界を繊細にすくい取り、純粋さの中に潜む危うさと、傷つきながら成長する瞬間を描く。友情と孤独をめぐる、直木賞受賞の長編小説。

カササギたちの四季

カササギたちの四季

カササギたちの四季 <光文社文庫>

発売日:2014年2月13日

短編集

リサイクルショップ「カササギ」で働く日暮は、売り物になりそうもない品まで引き取ってしまうお人よし。店主の華沙々木は理屈好きで、身の回りに起きる小さな事件を鮮やかに解いたつもりになるが、その推理はどこかずれている。近所の中学生・菜美も加わり、春夏秋冬に一つずつ、持ち込まれた品や町の人々をめぐる謎に向き合う。日暮は華沙々木の面子を守りつつ、誤った結論で誰かを傷つけないよう、陰から真相を整えようと奔走する。壊れた家具や古道具に残る記憶は、持ち主が口にできない事情を映し出す。噛み合わない二人のやり取りと、菜美の率直な視線を楽しみながら、人と物をもう一度生かす店の四季をたどる、温かみのある連作日常ミステリー。

水の柩

水の柩

水の柩 <講談社文庫>

発売日:2014年8月13日

長編

中学二年生の逸夫は、古い旅館の跡取りとして周囲に将来を決められたように感じ、「普通」ではない何かを求めている。一方、同級生の敦子は、両親の離婚や学校での孤立を抱え、誰にも目立たない「普通」の暮らしを願っていた。正反対に見える二人は、学校で埋めるタイムカプセルの手紙を交換しようと約束する。その行為に敦子が託した決意を知り、逸夫は彼女をつなぎ止める方法を探し始める。さらに、五十年前にダムの底へ沈んだ村と祖母の記憶が、現在の二人の選択に重なっていく。水の下に封じられた過去と、言葉にできない痛みは、どのように受け継がれるのか。少年少女の危うい友情と、家族が抱えてきた秘密を通して、生きることへの切実な願いを描く青春小説。

光

光 <光文社文庫>

発売日:2015年8月6日

長編

山あいの小さな町で暮らす小学四年生の利一には、いつも一緒に遊ぶ仲間がいる。不器用だが優しい慎司、自慢話の多い宏樹、悲しみを知って少し大人びた清孝、そして慎司の姉でありながら男子のように輪へ加わる悦子。子どもたちは森や川、家々の裏側で、自分たちだけが知る出来事に出会う。何気ない遊びから生まれた謎、胸をざわつかせる恐怖、説明のつかない小さな奇跡。それらは友情を試し、家族の秘密や町に残る傷へ彼らを近づけていく。幼い目に映る世界は明るいだけではなく、時に大人の嘘や暴力の影も宿す。それでも誰かを信じようとする気持ちは、暗がりの中に光を見つける。少年期のきらめきと痛みを、複数の視点と時間で描く連作長編。

ノエル a story of stories

ノエル a story of stories

ノエル a story of stories <新潮文庫>

発売日:2015年2月28日

長編

物語を作る三人の人生が、時を越えて響き合う。孤独と暴力に耐える中学生の圭介は、同級生の弥生に誘われ、二人で絵本を作り始める。小学生の莉子は、生まれたばかりの妹への複雑な気持ちを抱えながら、自分だけの童話を書く。妻を亡くした元教師の与沢は、子どもたちへの読み聞かせを通じて、過ぎた時間と向き合っていく。誰かのために紡いだ話は、書き手の手を離れ、別の場所で傷ついた人の心へ届く。現実を変えることはできなくても、物語は人を孤独から救えるのか。三つのエピソードが少しずつつながり、偶然に見えた出会いが一つの大きな贈り物へ変わっていく。クリスマスの光を思わせる温かな余韻と、物語を信じる力を描く連作小説。

笑うハーレキン

笑うハーレキン

笑うハーレキン <中公文庫>

発売日:2016年1月25日

長編

家具職人の東口は、仕事も住まいも失い、河川敷で暮らす仲間たちと日々をしのいでいる。すべてを手放したつもりの彼の前に、謎めいた女性が現れ、奇妙な家具の修理を依頼する。なぜ彼を選んだのか、直してほしい品にはどんな事情があるのか。依頼を引き受けた東口は、街の片隅で出会った者たちに助けられながら、思いがけない事件へ巻き込まれていく。壊れた家具は人の暮らしの痕跡を残し、傷んだ部分を直す作業は、彼自身が失った誇りを取り戻す過程とも重なっていく。善意と企みが入り交じり、誰が何を狙っているのか分からないまま、計画は大きく動き出す。人生につまずいた人々の再出発を、軽快な仕掛けと温かな笑いで包んだ、痛快な長編ミステリー。

貘の檻

貘の檻

貘の檻 <新潮文庫>

発売日:2016年12月24日

長編

離婚した大槇辰男は、駅のホームで曾木美禰子に酷似した女性を見かける。彼女は三十二年前、辰男の父に殺されたはずの人物だった。声をかける間もなく女性は電車にはねられ、その出来事を境に、辰男の記憶と現実は不穏に揺らぎ始める。真相を確かめるため、彼は息子の俊也を連れて、かつて事件が起きたO村へ向かう。閉鎖的な土地に残る噂、古い写真、薬、地下を流れる水路、繰り返される悪夢。幼い頃に見聞きした断片をたどるほど、父の罪について信じてきた物語に亀裂が入る。夢を食べるという獏は、恐怖を消す存在なのか、それとも忘れたい記憶を閉じ込める檻なのか。親子三代にわたる秘密と、人が過去を作り替える心の働きを描く長編ミステリー。

透明カメレオン

透明カメレオン

透明カメレオン <角川文庫>

発売日:2018年1月25日

長編

ラジオ番組で人気を集める桐畑恭太郎は、魅力的な声とは対照的に、自分の外見へ強い引け目を感じている。行きつけのバーでは、仲間たちを楽しませるため、身近な出来事をもっともらしい物語に作り替えてきた。ある雨の夜、店に現れた美しい女性・三梶恵から、恭太郎は突拍子もない「殺人計画」への協力を求められる。危険を感じながらも彼女に惹かれ、仲間を巻き込んで計画に足を踏み入れるが、語られた事情にはいくつもの不自然な点がある。声、容姿、作り話によって、人はどれほど別人に見えるのか。嘘が新たな嘘を呼び、即興の芝居が現実を動かすなか、恭太郎は自分自身の見え方とも向き合っていく。軽快な会話と切なさが交差する、仕掛けに満ちた長編エンターテインメント。

スタフ

スタフ

スタフ <文春文庫>

発売日:2019年9月3日

長編

移動デリを一人で切り盛りする夏都は、料理と車を相棒に、忙しくも自分らしい日々を送っている。ところが、思いがけない依頼と出会いをきっかけに、華やかな芸能界の裏側へ通じる事件に巻き込まれる。表向きの評判と当人の素顔、利用する側とされる側の思惑が食い違い、状況は休む間もなく変化していく。店を守りたい夏都は、逃げるだけでは済まないと腹をくくり、持ち前の行動力で関係者の間を駆け回る。誰の言葉を信じ、どこまで他人の事情へ踏み込むべきなのか。食べ物を届ける仕事で築いた人とのつながりが、追い詰められた彼女を支えていく。働くことの誇りと、予想外の危機へ立ち向かう一人の女性の強さを、速度感ある展開と温かな人間模様で描く長編ミステリー。

サーモン・キャッチャー the Novel

サーモン・キャッチャー the Novel

サーモン・キャッチャー the Novel <光文社文庫>

発売日:2022年12月13日

長編

屋内釣り堀「カープ・キャッチャー」には、釣り上げれば特別な品がもらえるという伝説の白い箱が沈んでいる。アルバイトの明は箱の中身を知りたがり、ある父親はどうしてもそれを手に入れようとする。店主を脅す女性、幽霊を撮影しようと集まった兄妹、正体のつかめない人々まで現れ、さびれた店はにわかに騒がしくなる。互いに無関係に見える願いや企みは、一匹の鮭をめぐって奇妙につながり、思いどおりにならない方向へ転がっていく。誰が何を釣り上げ、誰が罠を仕掛けているのか。小さな釣り堀を舞台に、秘密を抱えた登場人物たちの視点が入れ替わり、偶然が連鎖して大きな騒動を生む。ユーモアと哀愁、意外な仕掛けを詰め込んだ群像ミステリー。

満月の泥枕

満月の泥枕

満月の泥枕 <光文社文庫>

発売日:2020年8月6日

長編

下町の集合住宅で姪の汐子と暮らす凸貝二美男は、酒に酔った夜、白髪の老人と奇妙な光景を目にする。悲鳴、水の気配、そしてその場を去る男。記憶が曖昧なまま翌日を迎えると、見知らぬ少年が現れ、「おじさんが祖父を殺したのを見た」と告げる。しかも遺体は見つからず、少年は二美男に一緒に捜してほしいと頼む。自分は本当に何をしたのか。老人はどこへ消えたのか。二美男は汐子や個性豊かな住人たちを巻き込み、途切れた記憶をたどり始める。満月の夜の不確かな像と、泥のようにまとわりつく疑いのなか、町に暮らす人々の事情が次々と交差する。とぼけた会話と切実な家族の思いを織り交ぜ、消えた老人をめぐる謎を追う人情ミステリー。

スケルトン・キー

スケルトン・キー

スケルトン・キー <角川文庫>

発売日:2021年6月14日

長編

十九歳の坂木錠也は、雑誌の潜入取材を手伝っている。恐怖や良心の働きが周囲とどこか異なり、危険な現場でもためらわない。児童養護施設で育った彼に、母の形見として残されたのは一本の銅の鍵だけだった。ある日、同じ施設で過ごした友人から出生にまつわる秘密を聞かされ、錠也の過去を知る者たちの周辺で殺人が続き始める。鍵は何を開けるのか。自分を産んだ母はどんな人物だったのか。答えを求めて動くほど、彼の特異な性質と事件の関係が浮かび、信じてきた自己像も崩れていく。人の心を閉ざすものと、どんな扉も開くという「スケルトン・キー」の意味を重ねながら、生まれと環境、善悪の境界へ踏み込むサスペンス・ミステリー。

N

N

N <集英社文庫>

発売日:2024年6月20日

短編集

六つの章を、どの順番でも読めるように組み立てた実験的な長編小説。理科室から消えた生徒、正体の分からない殺人者、恋人のために秘密を抱える若者、鳥が落ちる不可解な現象など、各章では異なる人物と謎が描かれる。独立して見える物語には共通する人や出来事が潜み、先にどの章を読むかによって、ある言葉の意味や人物への印象が変わっていく。六章の並べ方は七百二十通り。読者が選んだ順序そのものが、伏線の見え方と物語の因果を組み替える。誰を信じ、どの出来事を原因と考えるのか。通常の最初と最後を持たない構成を通じて、真実は一つでも、そこへ至る理解は読み手の数だけあることを体験させる。物語を「読む順番」まで謎解きに変えたミステリー。

フォトミステリー

フォトミステリー

フォトミステリー <単行本>

発売日:2023年6月16日

短編集

一枚の写真と短い文章から、そこに隠された物語を読み解く五十編の作品集。家族の記念写真、旅先の風景、何気ない日常の一瞬など、最初は普通に見える画像も、添えられた言葉を読むと不穏な違和感を帯び始める。写真の端に写るもの、人物の視線、時間や位置のずれ。わずかな手掛かりを結びつけることで、語られていない事件や感情が浮かび上がる。一編は短くても、答えを知って写真へ戻れば、最初とはまったく異なる景色が見えてくる。文章だけでも写真だけでも完成せず、読者自身の観察と想像が最後の一片になる構成。怖さ、驚き、切なさ、ユーモアを凝縮し、ページをめくるたびに推理する楽しさを味わえる、写真と小説を融合したショートショート集。

きこえる

きこえる

きこえる <単行本>

発売日:2023年11月22日

短編集

音声と文章を組み合わせて真相を探る、五編の体験型ミステリー。二人の男が過去について交わす「秘密の会話」をはじめ、各編では登場人物の言葉や沈黙が事件の鍵を握る。本文を読み、掲載された二次元コードから音声を聴くと、文字だけでは分からなかった息づかい、間、周囲の音が新たな手掛かりとして立ち上がる。聞こえた内容は語りを裏づけるのか、それとも別の事実を示すのか。視覚と聴覚から得た情報が食い違うたび、読者は場面を組み直し、隠された意図を推理することになる。音を再生する順番や注意を向ける場所によっても、同じ会話の印象は変化する。小説を読む行為に「聴く」体験を加え、耳で気づいた瞬間に物語の景色が反転する新感覚の作品集。

I

I

I <単行本>

発売日:2025年11月26日

長編

二つの章をどちらから読むかによって、物語の結末と人物の運命が変わる長編小説。「ゲオスミン」では、田釜が路上生活者の野宮と出会い、元刑事だという彼の過去の話に耳を傾ける。「ペトリコール」では、高校生の夕歌がガラス職人の律子と暮らしながら、家族を奪った事件と、自分だけが抱える秘密に向き合う。別々に進む二つの人生は、読み手が選んだ順序によって原因と結果の位置を変え、先に知った事実が後の章の意味を塗り替えていく。同じ文章でも、ある順番では希望に見えた行為が、逆から読むと別の影を落とす。誰が生き、誰が死ぬのかを決めるのは、ページを開く読者自身。雨上がりの匂いを題材に、物語の時間と選択を問いかける実験的ミステリー。