米澤穂信の作品一覧
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何事にも積極的に関わらない「省エネ」を信条とする高校生・折木奉太郎。姉の命令で廃部寸前の古典部に入った彼は、好奇心旺盛な千反田える、旧友の福部里志、伊原摩耶花とともに、教室に閉じ込められた理由や図書室の不可解な貸出など、日常に潜む謎を解いていく。才能を持て余す奉太郎の推理力は、えるの「私、気になります」によって静かに目覚めていく。やがて彼女が打ち明けたのは、幼い日に伯父から聞いたはずなのに思い出せない言葉。三十三年前の学園紛争と、古典部の文集『氷菓』に秘められた真意を追ううち、ほろ苦い過去が浮かび上がる。青春の光と影を端正かつ鮮やかに描く、古典部シリーズ第1巻。
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省エネ主義の折木奉太郎が、古典部の仲間とともに文化祭用の自主制作映画を見せられる。廃屋を舞台にしたそのミステリーは、密室での殺人場面を最後に途切れ、脚本家も倒れて結末は不明のまま。先輩たちは、撮影済みの映像と配役から犯人とトリックを推理してほしいと頼む。三人の探偵役が示す解答を検討するうち、奉太郎は自分の推理力を周囲から期待され、眠っていた才能と向き合うことになる。しかし、筋の通った「解決」の先には、映像に残された小さな違和感と、物語を完成させたい者の思惑が待っていた。千反田えるの素朴な疑問が、答えの陰を照らし出す。創作と推理、人を読むことの危うさが交差する、古典部シリーズ第2巻。
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一九九一年四月。雨宿りしていたユーゴスラヴィア人の少女マーヤと出会った高校生・守屋路行と太刀洗万智は、行き場を失った彼女を友人の旅館へ案内する。十七歳のマーヤには、日本の祭りや習慣、何気ない振る舞いまでが新鮮な謎だった。彼女が投げかける問いを皆で考えるうち、平凡だった日常は鮮やかに姿を変え、守屋の心には遠い国への憧れが芽生えていく。だが二か月の滞在を終え、少女は分裂の気配が迫る祖国へ帰ってしまう。一年後、戦火の報に触れた仲間たちは、マーヤの記憶と言葉を手がかりに、彼女が帰った故郷を突き止めようとする。出会いと別れ、理解することの切実さを描く、ベルーフ(太刀洗万智)シリーズ第1作。
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高校一年生の小鳩常悟朗と小佐内ゆきは、恋人でも依存相手でもない、互いを助け合うだけの特別な関係。過去の失敗を胸に、目立たず穏やかな「小市民」として高校生活を送ろうと誓っている。ところが、消えたポシェット、自転車盗難、不可解なココアの作り方など、身近な謎が次々と二人の前に現れる。知恵働きを抑えたい小鳩は、友人の堂島健吾に巻き込まれ、つい推理を巡らせてしまう。一方、甘いものを愛する小佐内も、柔らかな微笑みの奥に別の顔を隠していた。春期限定のいちごタルトを楽しみにする二人は、清く慎まかな理想へたどり着けるのか。甘くほろ苦い青春ミステリー、小市民シリーズ第1弾。
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待ちに待った神山高校の文化祭。手違いで大量の文集『氷菓』を抱えた古典部は、知名度を上げて完売を目指す。ところが校内では、碁石、タロットカード、水鉄砲と、各部から品物が一つずつ盗まれる奇妙な事件が発生。現場に残されるメッセージと、犯行の順番にはどんな規則があるのか。千反田えるは事件を宣伝に生かそうと奔走し、福部里志は蓄えた知識を武器に推理合戦へ、伊原摩耶花は漫画研究会での葛藤に向き合う。店番で部室を動けない折木奉太郎も、わずかな情報から謎の構図を読み解き始める。祭りのにぎわいと、終わりに残る苦い余韻も忘れ難い。熱気の陰で交差する期待と才能の痛みを描く、古典部シリーズ第3巻。
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病気で大学を休学し、故郷へ戻った二十五歳の青年が開いた調査事務所〈紺屋S&R〉。想定していた仕事は、ただ一つ――犬捜しだった。ところが開業早々に持ち込まれたのは、家族にも行方を告げず姿を消した若い女性の捜索と、神社に伝わる古文書の由来を調べる依頼。彼は高校時代の後輩と手分けし、聞き込みとインターネット上の痕跡を追い始める。無関係に見えた二つの調査は、古い土地の記憶と現代の人間関係を介して、思いがけず交差していく。依頼人が語らなかったこと、失踪者が残した沈黙の意味とは。探偵を名乗るつもりのなかった青年の最初の事件を描く、端正でほろ苦い私立探偵ミステリー長編。
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小市民を目指して高校二年生になった小鳩常悟朗と小佐内ゆき。賢しらな推理も過激な仕返しも封印し、平穏な夏休みを送るはずだった。甘いものに目がない小佐内が用意したのは、市内の名店を巡る〈小佐内スイーツセレクション・夏〉。小鳩は地図を片手に、その完遂へ付き合うことになる。だが自転車盗難をはじめとする小さな出来事の背後に、不穏な気配が忍び寄り、二人の互恵関係そのものが試されていく。事件を前にして知恵働きを抑えきれない小鳩と、笑顔の内側に狼のような衝動を秘める小佐内。トロピカルパフェの甘さの先で、二人を待つ夏の運命とは。青春の危うさが加速する、小市民シリーズ第2弾。
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亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れた高校生のリョウは、断崖から転落した――はずだった。目を覚ますと、そこは見慣れた金沢の街。だが自宅で彼を迎えたのは、存在するはずのない姉・サキだった。この世界ではリョウは生まれず、その代わりにサキが家族の一員として生きている。もう一つの人生をたどるうち、家族の関係も、友人の選択も、恋人の運命さえも、元の世界とは違う形を見せ始める。二つの世界を分けた「ボトルネック」は何だったのか。自分の不在によって好転した現実を前に、リョウは否応なく自らの生を見つめ直す。若さの痛みと可能性を鋭く、容赦なくえぐる、異色の青春ミステリー。
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時給十一万二千円という破格の求人に集まった十二人の男女。彼らは人里離れた地下施設〈暗鬼館〉で、七日間の「人文科学的実験」に参加する。各自に与えられた奇妙な凶器、館内を監視する機械、殺人を犯せば報酬が増える規則――実験の正体は、参加者同士に疑心暗鬼と殺意を植えつける犯人当てゲームだった。最初の犠牲者が出たとき、平凡な大学生・結城理久彦は、生き残るため推理と交渉に踏み出す。限られた空間、疑わしい仲間、古典ミステリーを思わせる仕掛けの数々。誰が何のために殺し、運営側はどこまで見通しているのか。閉鎖空間の恐怖は一夜ごとに加速する。読者の先入観まで試す、緊迫のクローズド・サークル。
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古典部に入部した春から、進級を目前にした翌春まで。折木奉太郎、千反田える、福部里志、伊原摩耶花の一年を、季節ごとの謎でつなぐ連作短編集。校内放送で名指しされた生徒の不可解な行動、図書室でのささやかな違和感、正月の神社で起きる思わぬ災難、手作りチョコレートをめぐる事件――日常の片隅に生まれた疑問が、四人の距離を少しずつ変えていく。やがて奉太郎は、えるの頼みで伝統行事〈生き雛〉に参加するが、連絡の手違いで祭りの開催が危ぶまれる。その遠回りに隠された意図とは。四人が重ねた一年の手触りも鮮やかに残る。謎解きの向こうに芽生える感情を瑞々しく描く、古典部シリーズ第4巻。
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名家の令嬢たちが集う読書サークル〈バベルの会〉。古今の物語を愛し、優雅な知的遊戯に興じる彼女たちの周囲では、静かな日常を切り裂く惨劇がひそかに繰り返されていた。夏合宿を目前にした屋敷で起きる殺人、北の館に閉ざされた秘密、山荘に残る不穏な記憶、忠実な使用人が守ろうとする誇り――五つの物語は、それぞれ独立した謎を描きながら、〈バベルの会〉の名のもとでゆるやかにつながっていく。端正で甘美な語りの隙間からのぞくのは、階級と欲望、献身と悪意が生む冷たい影。古典作品への目配せも随所にきらりと光る。最後の一行まで気を抜けない、優雅さと残酷さが同居する暗黒ミステリー連作集。

秋期限定栗きんとん事件 上
初刊:2009年2月
秋期限定栗きんとん事件 下
初刊:2009年3月
小市民シリーズ
ミステリー
青春
長編
秋期限定栗きんとん事件 上
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秋期限定栗きんとん事件 下
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秋期限定栗きんとん事件 上
互いの本性を抑えるために結んだ関係を夏に解消し、別々の高校生活を歩み始めた小鳩常悟朗と小佐内ゆき。小鳩には手紙で呼び出してきた同級生の仲丸十希子が寄り添い、文化祭やクリスマス、初詣と、思い描いていた普通の青春が訪れる。小佐内もまた、新聞部の一年生・瓜野高彦と行動を共にするようになる。だが小鳩は、身近に現れる謎を前にすると、新しい恋人を置き去りにして推理へ没頭してしまう。一方、町では不審な放火が少しずつ繰り返され、新聞部員は独自に犯人を追い始める。離れたはずの二人と連続事件を結ぶものは何か。秋から春へ、甘くない青春が静かに動き出す、小市民シリーズ第3弾・上巻。
秋期限定栗きんとん事件 下
市内で続く放火事件は、季節をまたぐたびに規模を増し、ついに無視できない脅威となっていく。新聞部の瓜野高彦は犯人を追う記事に熱を上げ、小佐内ゆきはそのすぐそばで微笑みながら行方を見守る。互恵関係を解消した小鳩常悟朗も、事件の規則性に気づき、本格的な推理を始めるが、二人の間には以前とは違う距離がある。なぜ火はこの順番で放たれるのか。犯人は何を知らせようとしているのか。そして、それぞれ新しい相手を得た小鳩と小佐内は、もう一度向き合うことになるのか。張りつめた心理戦の緊張も最後まで途切れない。連続放火の論理と高校生たちの思惑が鮮やかに絡み合う、ほろ苦くスリリングな小市民シリーズ第3弾・下巻。
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大学を休学し、伯父の古書店に居候する菅生芳光。店を訪れた女性から、亡き父が生前に書いた五つの短い物語を探してほしいと依頼される。それらは結末が伏せられ、読者に真相を委ねる〈リドルストーリー〉だった。古い雑誌をたどり、一篇ずつ作品を集める芳光は、物語の背景に二十二年前の未解決事件があること、作者である依頼人の父がその容疑者だったことを知る。五つの断章は何を語り、失われた最後の一篇には何が書かれていたのか。虚構の中に隠された手がかりを読み解くほど、家族が長く封じてきた記憶が輪郭を帯びていく。本を探す営みと過去への追想が重なる、静かで精緻な、ほろ苦い本格ミステリー。
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二年生になった折木奉太郎たちの古典部に、明るく率直な新入生・大日向友子が仮入部する。四人は新しい仲間を歓迎し、順調に見えたが、本入部の締切直前、大日向は突然「入部しない」と告げた。短い期間に何が彼女の心を変えたのか。理由を尋ねる時間もないまま迎えたマラソン大会で、奉太郎は二十キロの道のりを走りながら、これまでの会話と行動を一つずつたどる。千反田えるの言葉、大日向の表情、何気ないやりとりに残された違和感。その背後には、善意だけでは越えられない人と人との距離があった。新歓の春に生まれた誤解をほどくことはできるのか。体力を消耗しながら心のすれ違いを概算する、切なくも瑞々しい古典部シリーズ第5巻。

折れた竜骨 上
初刊:2010年11月
折れた竜骨 下
初刊:2010年11月
単発(ノンシリーズ) ファンタジー
ミステリー
長編
折れた竜骨 上
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折れた竜骨 下
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折れた竜骨 上
十二世紀末、ロンドンから北海を進んだ先に浮かぶソロン諸島。領主の娘アミーナは、遍歴の騎士ファルク・フィッツジョンと従士ニコラに出会う。ファルクは、恐るべき魔術を操る〈暗殺騎士〉が領主の命を狙っていると警告するが、堅固なはずの城で殺人が起きてしまう。呪われたデーン人の襲来が迫り、島には戦の緊張が満ちるなか、容疑者として浮かぶのは領主に近い八人。人を操る術が実在する世界で、証言やアリバイはどこまで信じられるのか。アミーナは二人の騎士とともに、魔術の規則を踏まえながら論理の力で真相へ迫る。剣と呪い、歴史ロマンと本格推理が大胆に融合する息詰まる壮大な物語・上巻。
折れた竜骨 下
自然の要塞であるソロン諸島で、領主は〈暗殺騎士〉の魔術に斃れた。犯人に操られた〈走狗〉は、領主に近い八人のうち誰なのか。アミーナ、遍歴の騎士ファルク、従士ニコラは、封印の鐘が海に沈められた謎や、塔上の牢から不死の青年が消えた不可解な事件を追い、容疑者たちの証言を吟味していく。その間にも、海の向こうでは呪われたデーン人が再び島を狙い、刻一刻と戦の時が迫る。超自然の力が確かに存在しても、犯行には必ず人の意思と論理がある。魔術の制約を手がかりに、孤島の殺人と迫り来る侵略の真相へ挑む。最後の対決まで緊張と驚きが連鎖する。第64回日本推理作家協会賞に輝いた、剣と推理の巨編・下巻。
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父が失踪し、母の故郷へ移り住んだ中学生・越野ハルカ。過疎化の進む地方都市で、幼い弟サトルと新しい生活を始めるが、町には高速道路の誘致をめぐる大人たちの暗闘と、未来を見通す子どもの伝承が残っていた。やがて、サトルが口にした奇妙な言葉をなぞるように事件が起こり、ハルカは偶然では片づけられない不安にとらわれる。閉鎖的な町で繰り返される出来事、家族が隠してきた事情、都合よく語り継がれる過去。弟の予言は本当に未来を示すのか、それとも誰かが同じ構図を再演しているのか。町の未来と家族の秘密が不穏に絡み合う。大人の矛盾に囲まれながら自分の進む道を探す少女を描く、切実な青春ミステリー。
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交番勤務の警官が殉職した事件に残る違和感。恋人との復縁を望む男が訪れた、宿泊客の自殺が続く温泉宿。海外赴任中の商社員を追い詰める資源開発の対立。そして、若き弁護士がかつて世話になった下宿先の女性の殺人事件――。日常の足元にひそむ小さなほころびから、人が胸の奥に抱えた切実な動機をすくい上げる六篇を収録する。なぜその選択をするしかなかったのか。緻密な謎解きの果てで、登場人物の人生は鮮やかに別の表情を見せる。孤独な人間心理の深奥まで静かに照らし出す。張りつめたサスペンスと幕切れの余韻が際立つ傑作集。第27回山本周五郎賞受賞、主要ミステリーランキング三冠を達成した短篇集。
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二〇〇一年六月、海外旅行特集の事前取材でネパールを訪れたフリージャーナリスト・太刀洗万智。到着した夜、王宮で国王をはじめ王族が殺害される大事件が起き、国全体が混乱に包まれる。急遽現地に残った万智は、観光の取材を報道へ切り替え、人々の声を集め始める。だが事情を聞いた一人の軍人が、不可解な姿で遺体となって発見された。これは王宮事件の余波なのか、それとも別の意図を持つ殺人なのか。異邦の地で事実を追うほど、万智は「伝えること」が誰のためのものかを問い直すことになる。報道の倫理と殺人の論理が緊迫の中で交差する。真実を記事という見世物に変える者の責任を鋭く描く、ベルーフ(太刀洗万智)シリーズ第2作。
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高速道路沿いの養鶏場で消えた経営者を捜す表題作、高校生二人の死が〈恋累心中〉と呼ばれた事件、災害に遭った集落、事故現場に刻まれた名――。フリージャーナリスト・太刀洗万智が、人々の言葉と現場に残るわずかな違和感から、報道される物語の手前にある事実へ迫る六篇を収録する。冷静な観察眼を持つ彼女も、真実を暴けば誰かを救えるとは限らず、取材する側の痛みと責任を引き受けなければならない。正義、善意、執着が別の顔を見せる瞬間を、鋭い論理と深い余韻で切り取る。取材される者の沈黙にも静かに耳を澄ます作品集。事件と人間のあいだに残る距離を見つめる、ベルーフ(太刀洗万智)シリーズ短編集。
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二年生になった古典部の四人が、それぞれの過去と未来に向き合う六篇。奉太郎が省エネ主義を選ぶに至った中学時代、摩耶花が漫画研究会で追い続けた一冊、里志の気楽な笑顔の奥にある思い――身近な謎を解くたび、これまで見えなかった仲間の輪郭が浮かび上がる。夏休み初日、合唱祭でソロを任された千反田えるが本番前に姿を消す。摩耶花から連絡を受けた奉太郎は会場へ急ぎ、彼女がどこへ行ったのか、何を思っているのかを推理し始める。将来を自由に選べるはずの「翼」が、誰にとっても希望とは限らない。四人の成長と選択が静かな余韻を残す。青春の岐路を瑞々しくもビターに描く、古典部シリーズ第6巻。
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高校二年生の堀川次郎は、利用者の少ない図書室で委員を務めている。同じ当番の松倉詩門は、背が高く目立つ容姿に反して本好きで、快活に笑うほどよい皮肉屋。二人で過ごすようになってから、堀川の周りには妙な相談が持ち込まれる。亡き祖父が残した開かずの金庫、盗まれたテスト問題、先輩が最後に読んだ本――。図書室に集まる言葉と記憶を手がかりに、男子高校生コンビが身近な謎へ挑む。しかし、鮮やかな推理が明らかにするのは、必ずしも心地よい真実ばかりではない。互いに秘密を抱えた二人の友情にも、やがて見過ごせない影が差す。謎と本が結ぶ、ほろ苦い青春図書室ミステリー、図書委員シリーズ第1作。
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無人になって六年が過ぎた山間の集落・簑石を、Iターン移住で再生させる――市長肝いりの事業を担うため、市役所に〈甦り課〉が新設された。実務を背負う万願寺邦和は、やる気の見えない課長・西野と新人・観山を相手に、集まった移住希望者の暮らしを支え始める。ところが、住居や仕事、集落の習慣をめぐって、風変わりな謎とトラブルが続発。定住者は一人、また一人と集落を去っていく。過疎地の現実と行政の理想のはざまで、万願寺が見落としていたものは何か。地方再生をめぐる善意と打算が静かにせめぎ合う。人を呼び戻す計画の行き着く先を、苦みの利いたユーモアと精密な謎で描く連作ミステリー。
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心穏やかで無害な小市民を目指す小鳩常悟朗と小佐内ゆきが帰ってきた。新しく開店した店で注文したティー&マカロンセットは三種類のはずなのに、小佐内の皿には見覚えのない四つ目が載っていた。誰が、なぜマカロンを置いたのか。小鳩はさっそく推理を巡らせる。ほかにも、チーズケーキ、あげぱん、シュークリームをめぐる出来事が、二人の慎まかな日々をほどよく乱していく。甘いお菓子の陰には、人の見栄やためらい、言葉にできない思いが隠れている。軽やかな会話の奥で、二人の危うい本性もちらりとのぞく。知恵働きと復讐心を封じたつもりの二人は、今回こそ平穏を守れるのか。四つの謎を味わう、小市民シリーズ第1短編集。
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本能寺の変より四年前。織田信長に叛旗を翻し、有岡城へ立て籠もった荒木村重は、圧倒的な軍勢に包囲されながら籠城戦を続けていた。閉ざされた城内で、不可解な人質殺し、密室めいた首の消失など難事件が相次ぎ、兵と民の間に疑念が広がる。城を保つため真相を突き止めたい村重が知恵を求める相手は、土牢に幽閉した織田方の軍師・黒田官兵衛。村重が集めた手がかりを、官兵衛は暗闇の中で冷徹に組み直していく。二人の推理は人心を救うのか、それとも籠城の運命をさらに揺るがすのか。戦と信念の重圧が、謎解きの一手ごとに増していく。史実の巨大な密室に四つの謎を織り込んだ、第166回直木賞受賞の歴史本格ミステリー。
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〈古典部〉〈小市民〉シリーズから『黒牢城』まで、数々の謎を生み出してきた米澤穂信。その頭の中の書棚には、どんな本が並んでいるのか。学生時代から現在までに読んだミステリーや小説をめぐるエッセイ、書評、対談を集め、作家の豊かな読書遍歴と創作の背景を明かす。本との出会い、書店との付き合い、先達への敬意、物語を読む喜びが、率直でユーモラスな言葉でつづられる。文庫化にあたり本人による脚注を大幅に加筆し、巻末には直木賞受賞をめぐるエッセイも収録。読み手の本棚まで豊かに広げてくれる。紹介された本を次々と読みたくなる、ミステリー好き・本好きのための奥行き豊かなビブリオエッセイ。
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高校で図書委員を務める堀川次郎と松倉詩門。ある放課後、返却された本の中に、かわいらしい紫色の押し花の栞を見つける。それは強い毒を持つトリカブトだった。誰が、何のために図書室の本へ挟んだのか。校内を探る二人の前に複数の持ち主候補が現れるが、誰もが少しずつ事実を隠し、無関係に見えた嘘が幾重にも重なっていく。やがて毒草は単なる悪戯では済まない切迫した意味を帯び、二人の友情と、それぞれが守ってきた秘密にも影を落とす。図書室から始まる探索は、学校の外へも静かに広がる。真実を明らかにすることは誰を救い、誰を傷つけるのか。青春の痛みと謎解きが深く絡み合う、図書委員シリーズ第2作。
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群馬県警捜査第一課の葛警部は、愛想がなく、上司にも部下にも煙たがられている。だが、その捜査能力を疑う者はいない。連続放火で一軒だけ狙われなかった家、刺殺事件から消えた凶器、山中に遺棄されたバラバラ死体、不可解な立てこもり――現場に残された事実を丹念に拾い、捜査陣の思い込みを削ぎ落としたとき、葛だけが事件の奥に潜む論理を見抜く。派手な直感ではなく、地道な観察と推論が、見慣れた景色を鮮やかに反転させていく。葛の無口な横顔にも刑事としての信念がにじむ。無骨な刑事の人物像と、短篇ならではの切れ味を五つの事件で描く、著者初の警察本格ミステリー。主要ミステリーランキング三冠に輝いた傑作集。
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高校三年の冬、小市民を志す小鳩常悟朗は、車にはねられ右脚を骨折して病院へ運ばれる。手術を終え、警察の聴取を受けながらも記憶は曖昧で、事故を起こした車は逃げたまま。枕元には小佐内ゆきからの「犯人をゆるさない」というメッセージが残され、彼女は独自にひき逃げ犯を追い始める。病室から動けない小鳩は、限られた証言と記憶の断片を組み直すうち、事件が自分の中学時代と深く結びついていることに気づく。なぜ彼は狙われたのか。小鳩と小佐内が小市民を目指す前、二人を変えた出来事とは。知恵と復讐心を抱える二人の原点と、未来への選択が問われる。過去と現在の謎が冬の街で重なる、小市民シリーズ完結編。
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堂島健吾から小鳩常悟朗へ届いた、少し意外な頼み。それは、かつて絵の謎を解いたことになっている小佐内ゆきに、もう一度知恵を借りたいというものだった。地元出身の美術家が海外の賞を受賞し、テレビ局の依頼で母校を捜した健吾は、学生時代の作品を発見する。ところがその絵は模写で、しかも展覧会へ出品されていた。果たして盗作なのか、それとも別の事情があるのか。芸術をめぐる疑問をはじめ、ジェラート、スコーン、ザッハトルテに彩られた四つの事件に、小鳩と小佐内が挑む。日常の違和感が、軽やかな会話と鮮やかな論理で解きほぐされていく。甘い時間の奥に人の思惑を見抜く、小市民シリーズ第2短編集。
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作家生活二十五周年を迎えた米澤穂信が、デビュー以来さまざまな媒体に記してきた文章を、書き下ろしも交えて厳選したエッセイ集。日本で三番目ぐらいにうまい麻婆豆腐を作り、丘の上の図書館に絶大な信頼を寄せ、各地のスコーンを食べ比べ、歴史ある建物や美術に足を運ぶ。日常の小さな疑問から本、旅、食、創作へと好奇心が枝分かれし、精密な観察と思索が軽やかな文章へ変わっていく。〈古典部〉〈小市民〉から直木賞受賞作『黒牢城』まで、幅広い作品を生んだ感性の軌跡も垣間見える。作家の素顔にも出会える。歴史好きにも甘いもの好きにも、本好きにも開かれた、ビターでスイートな珠玉の精選エッセイ集。




























