- 恩田陸のシリーズ作品一覧
- 恩田陸のノンシリーズ作品一覧
- 『六番目の小夜子』(初刊:1992年7月)
- 『球形の季節』(初刊:1994年4月)
- 『不安な童話』(初刊:1994年11月)
- 『象と耳鳴り』(初刊:1999年10月)
- 『木曜組曲』(初刊:1999年11月)
- 『月の裏側』(初刊:2000年3月)
- 『ネバーランド』(初刊:2000年7月)
- 『上と外 : 上』(初刊:2000年8月)
- 『上と外 : 下』(初刊:2000年8月)
- 『puzzle』(初刊:2000年10月)
- 『ライオンハート』(初刊:2000年12月)
- 『図書室の海』(初刊:2002年2月)
- 『劫尽童女』(初刊:2002年4月)
- 『ロミオとロミオは永遠に : 上』(初刊:2002年11月)
- 『ロミオとロミオは永遠に : 下』(初刊:2002年11月)
- 『ねじの回転 : (上) FEBRUARY MOMENT』(初刊:2002年12月)
- 『ねじの回転 : (下) FEBRUARY MOMENT』(初刊:2002年12月)
- 『まひるの月を追いかけて』(初刊:2003年9月)
- 『禁じられた楽園』(初刊:2004年4月)
- 『Q&A』(初刊:2004年6月)
- 『夜のピクニック』(初刊:2004年7月)
- 『夏の名残りの薔薇』(初刊:2004年9月)
- 『蛇行する川のほとり』(初刊:2004年11月)
- 『ユージニア』(初刊:2005年2月)
- 『『恐怖の報酬』日記 : 酩酊混乱紀行』(初刊:2005年4月)
- 『小説以外』(初刊:2005年4月)
- 『ネクロポリス : 上』(初刊:2005年10月)
- 『ネクロポリス : 下』(初刊:2005年10月)
- 『チョコレートコスモス』(初刊:2006年3月)
- 『中庭の出来事』(初刊:2006年11月)
- 『朝日のようにさわやかに』(初刊:2007年3月)
- 『木洩れ日に泳ぐ魚』(初刊:2007年7月)
- 『いのちのパレード』(初刊:2007年12月)
- 『不連続の世界』(初刊:2008年7月)
- 『きのうの世界 : 上』(初刊:2008年9月)
- 『きのうの世界 : 下』(初刊:2008年9月)
- 『ブラザー・サン シスター・ムーン』(初刊:2009年1月)
- 『訪問者』(初刊:2009年5月)
- 『メガロマニア』(初刊:2009年5月)
- 『六月の夜と昼のあわいに』(初刊:2009年6月)
- 『私の家では何も起こらない』(初刊:2010年1月)
- 『土曜日は灰色の馬』(初刊:2010年8月)
- 『隅の風景』(初刊:2011年5月)
- 『夢違』(初刊:2011年11月)
- 『私と踊って』(初刊:2012年12月)
- 『夜の底は柔らかな幻 : 上』(初刊:2013年1月)
- 『夜の底は柔らかな幻 : 下』(初刊:2013年1月)
- 『雪月花黙示録』(初刊:2013年12月)
- 『EPITAPH東京』(初刊:2015年3月)
- 『消滅 : VANISHING POINT : 上』(初刊:2015年9月)
- 『消滅 : VANISHING POINT : 下』(初刊:2015年9月)
- 『タマゴマジック』(初刊:2016年3月)
- 『蜜蜂と遠雷 : 上』(初刊:2016年9月)
- 『蜜蜂と遠雷 : 下』(初刊:2016年9月)
- 『七月に流れる花』(初刊:2016年12月)
- 『八月は冷たい城』(初刊:2016年12月)
- 『失われた地図』(初刊:2017年2月)
- 『終りなき夜に生れつく』(初刊:2017年2月)
- 『錆びた太陽』(初刊:2017年3月)
- 『祝祭と予感』(初刊:2019年10月)
- 『歩道橋シネマ』(初刊:2019年11月)
- 『七月に流れる花 八月は冷たい城』(初刊:2020年7月)
- 『スキマワラシ』(初刊:2020年8月)
- 『日曜日は青い蜥蜴』(初刊:2020年11月)
- 『灰の劇場』(初刊:2021年2月)
- 『愚かな薔薇 : 上』(初刊:2021年12月)
- 『愚かな薔薇 : 下』(初刊:2021年12月)
- 『月曜日は水玉の犬』(初刊:2022年3月)
- 『なんとかしなくちゃ。 : 青雲編』(初刊:2022年11月)
- 『鈍色幻視行 上』(初刊:2023年5月)
- 『鈍色幻視行 下』(初刊:2023年5月)
- 『夜果つるところ』(初刊:2023年6月)
- 『spring』(初刊:2024年3月)
- 『珈琲怪談』(初刊:2025年4月)
- 『酒亭DARKNESS』(初刊:2025年8月)
- 『spring another season』(初刊:2025年12月)
恩田陸のシリーズ作品一覧
理瀬シリーズ(6作)
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『三月は深き紅の淵を』(初刊:1997年7月)
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『麦の海に沈む果実』(初刊:2000年7月)
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『黒と茶の幻想 : 上』(初刊:2001年12月)『黒と茶の幻想 : 下』(初刊:2001年12月)
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『黄昏の百合の骨』(初刊:2004年3月)
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『薔薇のなかの蛇』(初刊:2021年5月)
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『夜明けの花園』(初刊:2024年1月)
常野物語シリーズ(3作)
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『光の帝国 : 常野物語』(初刊:1997年10月)
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『蒲公英草紙 : 常野物語』(初刊:2005年6月)
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『エンド・ゲーム : 常野物語』(初刊:2006年1月)
神原恵弥シリーズ(4作)
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『MAZE』(初刊:2001年2月)
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『クレオパトラの夢』(初刊:2003年10月)
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『ブラック・ベルベット』(初刊:2015年5月)
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『傾斜のマリア』(初刊:2026年7月)
恩田陸のノンシリーズ(単発)作品一覧(刊行順)
『六番目の小夜子』(初刊:1992年7月)
ある地方の高校に、代々受け継がれてきた「サヨコ」と呼ばれる役の伝統があった。三年に一度、前任の「サヨコ」が次の者を選び、選ばれた生徒は誰にも気づかれぬまま、文化祭で『サヨコ』という劇を成功させなければならない——成功すれば、その年は合格率が上がるという。今年は六番目のサヨコの年。そんな三年生のクラスに、津村沙世子と名乗る美しい転校生がやって来る。恩田陸の伝説的デビュー作。
『球形の季節』(初刊:1994年4月)
四つの高校が建ち並ぶ東北の小さな町・谷津。地歴研(地理歴史文化研究会)の生徒たちが、街に広まり始めた奇妙な噂を追っていく。やがて噂通り、ある女子生徒が忽然と姿を消した。金平糖を使ったおまじないが町に静かに流行し、また新たな噂が広がっていく——退屈な日常、管理された学校、眠ったような街。すべてを見透かすように振る舞う「何か」が、最後の噂を町に投げかける。
『不安な童話』(初刊:1994年11月)
R大学で三人の教授の秘書を務める古橋万由子は、二十五年前に若くして殺害された天才画家・高槻倫子の最後の絵画展で、強烈な既視感とともに「鋏で殺される」予感に襲われ意識を失う。展覧会で出会った倫子の息子からは、「あなたは母の生まれ変わりかもしれない」と告げられる。倫子の遺した遺言、過去の事件、そして万由子の中に蘇り始める他人の記憶——前世の謎をたどる、初期恩田陸の幻想ミステリ長編。
『象と耳鳴り』(初刊:1999年10月)
「象を見ると耳鳴りがするんです」——退職した元判事・関根多佳雄が喫茶店で出会った老婦人が語り出したのは、奇怪な殺人事件の話だった。穏やかな日常にふと差し込むささやかな違和感、旅先での不思議な遭遇、伝聞や手紙の中に潜むほつれ——。劇的な現場よりも、人と人のあいだに横たわる謎を、老紳士の落ち着いた視線が解きほぐしていく。デビュー作『六番目の小夜子』主人公の父・多佳雄を狂言回しに据えた、本格推理短編十二編を収録。
『木曜組曲』(初刊:1999年11月)
M市郊外の洋館「うぐいす館」で、四年前に薬物の過剰摂取により謎の死を遂げた人気作家・重松時子。その命日に、彼女ゆかりの女性五人——ライター、流行作家、純文学作家、編集者、出版プロダクション経営者——が一堂に会する。差出人不明のメッセージをきっかけに、和やかだった会話の中へ、それぞれが隠してきた告白が次々と滑り込み始める。時子の死は本当に自殺だったのか、それとも——。会話劇の名手が描く心理サスペンス。
『月の裏側』(初刊:2000年3月)
九州の水郷都市・箭納倉では、水路沿いの旧家に住む老女たちが立て続けに失踪し、しばらくして記憶を失った状態で何事もなかったように戻ってくるという、不可解な事件が静かに繰り返されていた。元大学教授・三隈協一郎と教え子の塚崎多聞、その娘や地元の新聞記者らは、町の人々の様子に得体の知れない違和感を覚え始める。水路に潜む「何か」が、人を静かにすり替えていくのではないか——和の風景に流れる、ジャパネスク・ホラー長編。
『ネバーランド』(初刊:2000年7月)
田舎にある名門私立男子校の寄宿舎・松籟館。冬休みに帰省しなかった三人の生徒たちのもとへ、クリスマス・イブの夜、四人目の生徒・瀬戸統が加わる。買い出しと自炊で営まれる気ままな暮らしのなか、ふと始まった「告白ゲーム」が、それぞれの抱える家族の事情や、これまで誰にも話さなかった秘密を炙り出していく。嵐と幽霊の噂が漂う七日間を切り取った、恩田陸の青春小説の代表作。
『上と外 : 上』(初刊:2000年8月)
夏休み、中学生・楢崎練は妹の千華子、母とともに、考古学者の父が任地とする中央アメリカの架空の国・G国を訪れていた。父との久しぶりの旅の途中、突如として軍事クーデターが勃発し、避難中のヘリから練と千華子が落下して家族は離れ離れになる。深い密林、現地で出会う謎めいた少年ニコ、そして古代マヤ文明の遺跡群——子どもたちが知恵と勇気で見知らぬ大地を生き延びていく、サバイバル冒険長編の上巻。
『上と外 : 下』(初刊:2000年8月)
離散した家族は、それぞれの場所で生き延びる道を探る。練はニコに導かれ、千華子をめぐる危機のなかで古代マヤの儀式へと巻き込まれていき、両親もまた隔離された状況から子どもたちを捜し続ける。生と死のせめぎ合いのなかで、家族はそれぞれの「上」と「外」と向き合い、自分自身の輪郭を取り戻していく。上巻から続くサバイバル冒険長編の完結巻。
『puzzle』(初刊:2000年10月)
かつて炭鉱で栄え、いまは廃墟となった長崎沖の無人島・鼎島で、関連の見えない三つの男性の遺体が立て続けに発見される。学校の体育館で餓死した者、高所から落ちたかのように全身を損壊した者、映画館の座席で感電死した者——。「piece」「play」「picture」の三部構成のもと、検事の関根春らが新聞記事や情報の断片を組み合わせ、ジグソーパズルのように真相を浮かび上がらせていく。短い分量に多彩な仕掛けを詰め込んだ、技巧的なパズル・ミステリ。
『ライオンハート』(初刊:2000年12月)
ロンドン大学法学部の名誉教授・エドワード・ネイサンが突然失踪し、家には「from E. to E. with love」と刺繡された白いレースのハンカチーフと、「LIONHEART」と書かれた便箋だけが残されていた——。十七世紀のロンドン、十九世紀のシェルブール、二十世紀のパナマやフロリダ。時代と土地を超えて、エドワードとエリザベスは何度も巡り会い、別れていく。恩田陸が描く、時空を超えた再会の異色ラブストーリー。
『図書室の海』(初刊:2002年2月)
古今和歌集を題材に時間旅行を描く「春よ、こい」、『夜のピクニック』の前日譚として歩行祭の予兆を描く「ピクニックの準備」、『六番目の小夜子』の世界に連なる表題作「図書室の海」、幼き日の水野理瀬を描く『麦の海に沈む果実』への入り口「睡蓮」、喫茶店のウエイトレスの密やかな悪意を描く「国境の南」など、他の長編へとつながる番外編も含む十篇を収録。恩田陸ワールドの魅力を凝縮した、短編玉手箱。
『劫尽童女』(初刊:2002年4月)
父である伊勢崎博士から強大な超能力を与えられた少女・遥は、秘密組織「ZOO」の追跡を逃れ、父と二人きりで逃亡生活を続けてきた。七年の月日が流れたある日、再び組織との抗争に巻き込まれ、父を失った遥は、同じく特殊な力を持つ犬・アレキサンダーとともに、児童養護施設へと身を隠す——。「劫尽」とは、世界が崩れるときにすべてを焼き尽くす炎の名。少女の成長譚とヒロイックな逃避行が交差する、SFサスペンス長編。
『ロミオとロミオは永遠に : 上』(初刊:2002年11月)
近未来、地球は汚染と公害の終末地となり、日本人だけが居残って化学物質や産業廃棄物の処理に従事させられていた。エリートへの道はただ一つ——「大東京学園」の卒業総代になること。過酷な入試をくぐり抜けたアキラとシゲルを待ち受けていたのは、前世紀サブカルチャーの歪んだ遺物と、閉ざされた未来への絶望が支配するキャンパスだった。男子校だけのディストピアSF長編の上巻。
『ロミオとロミオは永遠に : 下』(初刊:2002年11月)
学園の存在意義に疑問を覚えたアキラは、何者かの計略により問題児ばかりが集められる「新宿」クラスへ降格になる。そこではリーダー・シマバラ率いる十三人の生徒たちが、命を懸けた学園からの脱走計画を進めていた。学園最大のイベント「大東京オリンピック」の開催日にして“脱走の特異日”である十月十日が、刻一刻と迫る。痛切な青春群像と閉鎖世界SFを織り上げた、長編の完結巻。
『ねじの回転 : (上) FEBRUARY MOMENT』(初刊:2002年12月)
近未来、タイムマシンを手にした国連が過去への介入を繰り返した結果、歴史は大きく歪み、人類は滅亡の危機に瀕する。これを修復すべく選ばれた「修復点」は、昭和十一年二月二十六日の雪の東京——二・二六事件。決行を任された安藤大尉らかつての青年将校たちは、それぞれの意識をたずさえて再生され、雪の帝都に降り立つ。同じ歴史をなぞるのか、それとも別の道を選ぶのか。歴史改変SF長編の上巻。
『ねじの回転 : (下) FEBRUARY MOMENT』(初刊:2002年12月)
再生された二・二六事件は、繰り返されながらも少しずつ過去と異なる軌跡を描き始める。観察する未来側の関係者にも、徐々に予測しきれない動揺が広がっていく。歴史をやり直すことの意味と、自由意志の重さ。安藤大尉らの一夜と、未来の修復計画の行方が交錯しながら、物語は「ねじ」を最後まで巻き切る。歴史と未来の往還を描いた長編SFの完結巻。
『まひるの月を追いかけて』(初刊:2003年9月)
失踪した異母兄・渡部研吾を探すため、たった二度しか会ったことのない兄の長年のパートナー・優佳利に誘われて、静は奈良の旅に出る。早春の橿原神宮、藤原京跡、今井、明日香——古都の遺跡と街並みを歩くうちに、兄の周辺をめぐる事実が次々と明らかになっていくが、それが真実なのか嘘なのかは判然としない。静自身の家族の事情も静かに浮かび上がる、奈良を舞台にしたロード・ミステリ。
『禁じられた楽園』(初刊:2004年4月)
建築学科に通う平凡な学生・平口捷の前に、若き天才アーティスト・烏山響一がクラスメイトとして現れ、なぜか彼に近づいていく。やがて捷は、響一が紀州熊野の山中に築き上げた秘密の野外美術館へ招かれる。緑深い森に組み込まれた異形のオブジェ、夜に響く正体不明の物音、観る者を悪夢へと引き込む作品群——。「この世で一番恐ろしいのは、狂気よりむしろ正気である」。芸術と狂気の境界が崩れていく、サイコ・ホラー長編。
『Q&A』(初刊:2004年6月)
東京郊外の大型商業施設で、六十九人の死者と百十六人の負傷者を出す大事故が発生する。原因は判然としないまま、目撃者、生存者、関係者、伝聞者——多数の声に繰り返し問いかける「Q」と、それに答える「A」。監視映像に映ったものは何だったのか、現場に漂っていた異臭、血まみれのぬいぐるみを引きずる少女の正体——。すべて対話形式で構築される、現代社会の闇を炙り出す異色のミステリ長編。
『夜のピクニック』(初刊:2004年7月)
北高校の伝統行事「歩行祭」は、全校生徒が一昼夜かけて八十キロを歩き続ける。主人公・甲田貴子は、同じクラスにいながら一度も口を利けずにいたある男子生徒との関係に、三年間胸の奥にしまってきた秘密を抱えながら、ささやかな「賭け」を心に決めて歩き始める。語られなかった事情、家族の影、友人たちのやり取り。本屋大賞と吉川英治文学新人賞をW受賞した、青春小説の金字塔。
『夏の名残りの薔薇』(初刊:2004年9月)
山深い古いリゾートホテルで、沢渡家の三姉妹が毎年秋に開く優雅なパーティ。集まったのは、姉妹の甥の嫁である美しい桜子、次姉の女優の娘・瑞穂、そして噂を背負った客人たち。穏やかな会話に不穏な気配が混じり始めたとき、関係者のひとりが謎の死を遂げる——。第一から第六のヴァリエーションへと章を進めるごとに、視点も、事件の有無さえも揺らいでいく。映画『去年マリエンバートで』の影を宿した、大人の心理ミステリ。
『蛇行する川のほとり』(初刊:2004年11月)
高校の美術部の毬子は、先輩の香澄と芳野から、演劇祭の舞台背景づくりを目的に、香澄の家での夏合宿に誘われる。蛇行する川のほとりの瀟洒な邸宅にはかつて起きた不幸な出来事の影が漂い、二人の先輩が何かを秘めているのを感じた毬子は、しだいに疑念を募らせていく。毬子、芳野、真魚子、香澄——四人の少女がそれぞれの視点で語る四章構成で、儚く残酷な少女性を浮かび上がらせる青春ミステリ。
『ユージニア』(初刊:2005年2月)
地方の旧家で開かれた米寿の祝賀会で、毒物の盛られた酒やジュースを口にした十七人が次々と死亡する大量毒殺事件が発生する。生き残ったのは盲目の少女・緋紗子ただ一人——。事件から数十年を経て、関係者や周辺の人々への聞き取りが、断片的な独白として連なっていく。白い百日紅の屋敷で何が見え、何が語られなかったのか。第五十九回日本推理作家協会賞を受賞した、語りの構造そのものが謎となる傑作ミステリ。
『『恐怖の報酬』日記 : 酩酊混乱紀行』(初刊:2005年4月)
ビールを求めて英国とアイルランドへ初の海外旅へ——しかし著者は極度の飛行機嫌い。果たしてその旅は最後までたどり着けるのか。「イギリス・アイルランド」「麒麟麦酒横浜工場」「札幌落雪注意」「オリオンは新年、東の空から昇る」の四章で、初めての海外と日本各地のビール工場めぐりを綴った紀行エッセイ。タイトルは大好きなフリードキン監督作品『恐怖の報酬』から——酒と旅と映画を愛する作家の素顔がのぞく一冊。
『小説以外』(初刊:2005年4月)
ミステリー、ファンタジー、ホラー、SF、少女漫画、日本文学——ありとあらゆる読書を貫いてきた作家・恩田陸の、デビューから十四年分のエッセイを集成した一冊。「深夜の肴」「赤ワインと豚汁」「文庫SFマイ・ベスト5」「懐かしく悩ましきABC殺人事件」「バーチャル飼主」「読書の時間」など、料理と映画と音楽、転校が多かった少女時代の記憶までも自在に語る。物語の作り手の原風景が浮かび上がるエッセイ集。
『ネクロポリス : 上』(初刊:2005年10月)
懐かしい故人と再会できる聖地・アナザー・ヒル。文化人類学を学ぶ青年ジュンは研究のためにこの地を訪れるが、巡礼者たちの多くは死者から連続殺人犯「血塗れジャック」の正体を聞き出そうとしていた。やがてジュンの目の前に、鳥居に吊るされた死体が現れる——。死者と生者が共に歩む霧の街で、ジュン自身もまた殺人事件の渦中へと巻き込まれていく、ファンタジー・ミステリ長編の上巻。
『ネクロポリス : 下』(初刊:2005年10月)
聖地に集った百七十三人全員に殺人の容疑が降りかかる。嘘を許さぬ古来の儀式「ガッチ」を経てもなお犯人は浮上しない。途方に暮れるジュンの前に、「血塗れジャック」の被害者たちが現れ、自ら証言を始める。真実をたどるため、ジュンたちは聖地の地下深くへと足を踏み入れる。死者と生者を交えた群像で構築される、独特の世界観を持つ長編の完結巻。
『チョコレートコスモス』(初刊:2006年3月)
大学に入って初めて演劇に出会った無名の少女・佐々木飛鳥は、W大学演劇研究会系の無名劇団で、人を惹きつける天性の才能を周囲に知らしめていく。一方、子役時代から舞台に立ち続けてきた若き女優・東響子は、自分にはない何かを持つ飛鳥に静かな脅威を感じ始める。映画プロデューサー・芹澤が主催する伝説的なオーディションで、二人の天才はついに同じ舞台に立つ。「演じる」とは何かを問う、演劇青春長編。
『中庭の出来事』(初刊:2006年11月)
高級ホテルの中庭で、人気の脚本家・神谷華晴が変死を遂げる。発表予定だった戯曲『告白』の主演候補だった女優三人に容疑がかかり、警察は彼女たちに彼の死を題材にしたモノドラマ『告白』を演じさせる——そして、その状況そのものを題材に『中庭の出来事』という戯曲を書く脚本家がさらに現れる。劇中劇を多層に積み上げる構成のうちに、虚実の境が眩しく揺らいでいく。山本周五郎賞を受賞した技巧的な長編ミステリ。
『朝日のようにさわやかに』(初刊:2007年3月)
ジャズのスタンダード曲をタイトルに掲げた表題作のほか、共通のイメージが連鎖して記憶を揺さぶる物語、葬式帰りの中年男女四人が居酒屋で語り明かす「楽園を追われて」、SF、ホラー、ミステリ、青春、恋愛、ファンタジーまで、多彩なジャンルを自在に行き来する短編集。「水晶の夜、翡翠の朝」「ご案内」「あなたと夜と音楽と」「冷凍みかん」「赤い毬」「卒業」ほか、十四篇を収録。
『木洩れ日に泳ぐ魚』(初刊:2007年7月)
別れを決めた男女が、引越しを翌日に控えた最後の夜、アパートの一室で長い対話を交わす。共有してきたつもりの過去の記憶に、少しずつズレが顔を出し、互いの生い立ちと家族にまつわる秘密が静かに明かされていく。語り手は男女のあいだで交互に入れ替わり、夜明けが近づくころ、二人はある男の死の真相をめぐって緊迫した心理戦を繰り広げる。濃密な会話劇ミステリ。
『いのちのパレード』(初刊:2007年12月)
ありえない動物、ありえない街、ありえない出来事——奇想と幻想が踊り出すような短編集。恩田ワールドの原点ともいえる「異色作家短篇集」へのオマージュとして編まれた、ジャンルを越境する十五篇。「観光旅行」「スペインの苔」「蝶遣いと春、そして夏」「橋」「蛇と虹」「夕飯は七時」「隙間」「当籤者」「かたつむり注意報」「あなたの善良なる教え子より」「SUGOROKU」、表題作「いのちのパレード」ほか、物語の祝祭が並ぶ一冊。
『不連続の世界』(初刊:2008年7月)
妻と別居中の塚崎多聞は、三人の友人から「夜行列車で怪談を語り合いながら、讃岐うどんを食べに行く旅」に誘われる。揺れる車中、多聞の携帯には何度も無言電話が入り、やがて友人の一人がぽつりと告げる——「俺は、おまえの奥さんはもうこの世にいないと思う。おまえが殺したからだ」。日本各地を旅する塚崎多聞を主人公にした、ささやかな違和感から始まる連作短編トラベル・ミステリ五編を収録。
『きのうの世界 : 上』(初刊:2008年9月)
三本の高塔と水路が走るM町。上司の送別会の夜から消息を絶っていた男が、町外れの「水無月橋」のたもとで一年後に死体となって発見される。犯人はこの町の誰かなのか。同じ時刻に犬を連れて散歩する七十六歳の双子の老姉妹・華代と虹枝をはじめ、町に縁ある人々の証言や思い出がしだいに連なり、町に伏流する古い物語が浮かび上がっていく。土地の記憶を主題にした長編ミステリの上巻。
『きのうの世界 : 下』(初刊:2008年9月)
死体の身元と、M町に住む人々の人生がしだいに結びつき、町全体に伏流する古い物語が表面に立ち上ってくる。地霊のような土地の感覚、家族の代を超えた約束、誰かの「きのう」が今日に届く瞬間。多視点の連作的な語りを重ねながら、記憶と土地の力を編み上げていく、長編ミステリの完結巻。
『ブラザー・サン シスター・ムーン』(初刊:2009年1月)
高校の同級生だった楡崎綾音、戸崎衛、箱崎一の「ザキザキトリオ」が過ごした、東京での大学時代を描く青春小説。「ねえ、覚えてる?空から蛇が落ちてきたあの日のことを——」と始まる物語は、本と映画と音楽さえあれば幸せだった一九八〇年代の特別な時間を、いくつもの記憶の断片で編み上げていく。後年それぞれ金融、鉄鋼、映画監督へと進む三人の歩みを通して、「大学」という空間を描いた一冊。
『訪問者』(初刊:2009年5月)
亡くなった映画監督・峠昌彦と親交のあった井上が、湖を見下ろす山中の古い洋館を訪れる。三年前、その湖では昌彦を育てた実業家・朝霞千沙子が不審な死を遂げていた。屋敷には「訪問者に気をつけろ」という不気味な警告文が届いており、ある少女は亡き「大伯母さま」を見たと言い張る。冬の雷鳴の夜、新たな死体が発見され、残された一篇のシナリオから、真実が静かに姿を現していく。嵐の山荘ミステリ。
『六月の夜と昼のあわいに』(初刊:2009年6月)
『私の家では何も起こらない』(初刊:2010年1月)
小さな丘に佇む二階建ての古い洋館を訪れたのは、「本物の幽霊屋敷」を探しているという男だった。出迎えた女主人とともに、男はこの家にかつて住まった者たちの痕跡をたどり始める。キッチンで殺し合った姉妹、子どもをさらって主人に食べさせた料理女、動かない少女のかたわらで自殺した殺人鬼の美少年——。家に刻印された記憶が、十の連作短編として静かに重なり合っていく、家そのものを主人公にしたゴシック・ホラー連作。
『土曜日は灰色の馬』(初刊:2010年8月)
「硝子越しに囁く」に始まり、「面白い本はすべてエンタメ」「少女漫画と成長してきた」「暗がりにいる神様は見えない」の章で、小説、漫画、映画、音楽、芝居——若い頃から愛してやまない数々の作品と、それらを通して見える世界について語り尽くす、満を持して文庫化された傑作エッセイ集。物語の語り手・恩田陸の目に映る景色、耳に響く音、そして言葉。想像の大海を縦横に行き来する一冊。
『隅の風景』(初刊:2011年5月)
ビールを楽しんだプラハ、巡礼者の歩くスペインの道、高所恐怖症と戦った韓国、ロンドンの児童文学挿絵専門ギャラリー、台湾や韓国のブックフェア、北京と上海、約二カ月続く郡上踊りとお盆四日間の徹夜おどり、伊勢神宮と日光東照宮、阿蘇と熊本——著者自ら撮影した写真とともに綴る紀行エッセイ。書き下ろし「ゲニウス=ロキ覚書」では、これまでの自作の舞台になった土地を明かす。
『私と踊って』(初刊:2012年12月)
表題作「私と踊って」は、伝説のダンサー、ピナ・バウシュへの想いを込めて書かれた——パーティで佇む孤独な人物の手を、奇妙な目をした少女が取って光のなかへと連れ出す。SF、幻想、青春、ホラー、ミステリと、ジャンルも語り口も自在に切り替わる十九篇を収録。「心変わり」「骰子の七の目」「忠告」「弁明」「少女界曼荼羅」「東京の日記」など、それぞれの世界がそれぞれの音楽で踊り出す、舞踏会のような短編集。
『夜の底は柔らかな幻 : 上』(初刊:2013年1月)
国家権力の及ばない無法の国「途鎖国」。特殊な力を持つ「在色者」である女性捜査官・実邦は、身分を偽ってこの国へと足を踏み入れる。「闇月」と呼ばれる期間、人々はそれぞれの目的を胸に山へと向かい始めていた。謎めいた殺人者、かつての師が遺した言葉、土地に潜む悲しい過去——。山と森と神域に守られた閉ざされた世界で、複数の思惑が静かに交錯し始める、長編SF・ファンタジーの上巻。
『夜の底は柔らかな幻 : 下』(初刊:2013年1月)
在色者たちと、彼らを巡る人々の動きはしだいに収束していき、「色」の力が何のために存在し、誰のために守られてきたのかが、見え始める。実邦が背負ってきた過去と「途鎖国」の運命とが重なり合い、闇月の終わりとともに、それぞれの選択が下されていく。緑深い山林と神話的時間の流れの中で物語が結晶する、長編SF・ファンタジーの完結巻。
『雪月花黙示録』(初刊:2013年12月)
近未来、日本は伝統への回帰と鎖国を志向する「ミヤコ」と、かつての経済大国としての名残にしがみつく「帝国主義者」に二分されていた。そこへ第三の勢力「伝道者」が姿を現し、不穏な気配が広がっていく。政財界に強い影響力を持つ剣の達人の生徒会長や、剣を操る美しい少女たち——日本の未来を左右する学園での攻防が、ゴシック・ジャパネスクな意匠とともに描かれる、新感覚のエンターテインメント長編。
『EPITAPH東京』(初刊:2015年3月)
東京を題材にした戯曲「エピタフ東京」を書こうと格闘する「筆者K」のもとに、自らを吸血鬼と名乗る男・吉屋が現れ、東京の秘密を探るためのポイントは「死者」だと告げる。災害、戦争、信仰、祝祭——東京は人々の手で繰り返し作り変えられてきた。筆者Kのエッセイ的な章、吉屋のモノローグ、そして戯曲そのもののパート——三層が往還する構成で、都市・東京という巨大な生き物の輪郭を辿るファンタジー長編。
『消滅 : VANISHING POINT : 上』(初刊:2015年9月)
消滅 : VANISHING POINT : 上 <幻冬舎文庫>
発売日:2019年1月24日
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巨大台風が接近する国際空港で、入国審査のさなか十一人の乗客が突如、別室に隔離される。通信障害で機器も使えないなか、人型の高度AIである女性が告げた——「この中に重大なテロの首謀者が紛れています。あなたがた自身で見つけ出してください」。閉ざされた空間で、十人は互いを疑い合いながら推理を始める。緊迫感あふれる長編サスペンスの上巻。
『消滅 : VANISHING POINT : 下』(初刊:2015年9月)
消滅 : VANISHING POINT : 下 <幻冬舎文庫>
発売日:2019年1月24日
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北米帰国者のあいだで広がる新型肺炎、細菌兵器隔離との関連、テロリスト集団が好んで使う「消滅」という言葉——。隔離された十人の身元と記憶が揺らぐなか、高潮が空港に迫り、彼らの忍耐も限界を超えていく。やがて建物のどこかで爆発音が響き、戦慄すべき計画とその実行者の姿が浮上していく。記憶と国家、テロと監視を主題にした、長編サスペンスの完結巻。
『蜜蜂と遠雷 : 上』(初刊:2016年9月)
三年に一度、地方都市で開かれる「芳ヶ江国際ピアノコンクール」。家にピアノを持たない十六歳の風間塵、母の死をきっかけにピアノから離れた元天才少女・栄伝亜夜、家庭と仕事を抱えて挑む二十八歳の楽器店員・高島明石、エリート街道を歩む優勝候補・マサル——世界中から才能たちが集い、長い予選から本選への道のりが始まる。直木賞・本屋大賞をW受賞した、音楽小説の金字塔の上巻。
『蜜蜂と遠雷 : 下』(初刊:2016年9月)
予選を勝ち抜いた者たちは、いよいよ本選とオーケストラとの協奏曲に向かう。指揮者、審査員、家族、聴衆——音をめぐる人々の人生もまた、コンクールの進行とともに静かに動き出していく。それぞれが背負ってきたものを、ピアノの前でどう手放し、どう受け取り直すのか。直木賞・本屋大賞W受賞、青春群像長編の完結巻。
『七月に流れる花』(初刊:2016年12月)
六月に「夏流」の町に転校してきたミチルは、夏休みも友人ができぬまま終業式の日を迎える。大きな鏡の中に緑色をした不気味な「みどりおとこ」の影を見たとき、彼女の手には夏流城での林間学校への招待状が握られていた——召された子どもは必ず行かねばならない。蔦に覆われた古城で、ミチルはほかの少女五人との共同生活に入る。鐘の合図、水路を流れる花の色と数。少女側の視点で語る、夏のジュブナイル・ファンタジー。
『八月は冷たい城』(初刊:2016年12月)
夏流城での林間学校に参加した四人の少年たちを出迎えたのは、首を折られた四本の向日葵だった。初めて城を訪れる光彦、二年ぶりに再会した幼馴染みの卓也、大柄でおっとりした耕介、唯一過去に城を経験した勝ち気な幸正。閉ざされた城のなかで、互いに疑心暗鬼を募らせる事故が続き、光彦は茂みの奥に鎌を持って立つ人影を目撃する。『七月に流れる花』と対をなす、少年たちの夏の物語。
『失われた地図』(初刊:2017年2月)
日本各地のかつての軍都に現れる「裂け目」——そこからは、生きた人々の記憶が形を成して現代へと溢れ出す。鮎観一族は代々、この裂け目を封じ、記憶の化身たちと戦う力を受け継いできた。かつて愛し合い夫婦であった鮎観と遼平もまた同じ力を持つ存在だが、息子を授かったことから運命の歯車が静かに狂い始める。錦糸町、川崎、上野、大阪、呉、六本木——歴史の傷を主題にした、直木賞受賞第一作のファンタジー長編。
『終りなき夜に生れつく』(初刊:2017年2月)
『夜の底は柔らかな幻』の世界に連なるスピンオフ短編集。やがて犯罪王と呼ばれることになる「神山」、女医・須藤みつき、葛城、そして雑誌記者・岩切和男ら、登場人物それぞれの過去や出会いを掘り下げる四篇——「砂の夜」「夜のふたつの貌」「夜間飛行」、そして表題作「終りなき夜に生れつく」を収録。「在色者」たちの群像が静かに連なる、闇に厚みを与える短編集。
『錆びた太陽』(初刊:2017年3月)
「最後の原発事故」を経て立ち入り規制となった地域では、ロボット「ウルトラエイト」たちが日々の業務を黙々と続けていた。そこへ、自らを国税庁から派遣されたと名乗る女・財護徳子が突如現れ、三日間の査察を告げる。事前通知のなかった訪問にロボットたちは戸惑い、彼らが本当にロボットなのか、そもそも人間との境界とは何かを問い直されていく。近未来の対話的SF長編。
『祝祭と予感』(初刊:2019年10月)
『蜜蜂と遠雷』の世界を再訪する、待望のスピンオフ短編集。「祝祭と掃苔」「獅子と芍薬」「袈裟と鞦韆」「竪琴と葦笛」「鈴蘭と階段」「伝説と予感」の六篇を収録。コンクールの後を生きる亜夜・塵・マサルそれぞれの姿、伝説のピアニスト・ホフマンと幼き塵の運命の出会いなど、本編で語られなかった瞬間が綴られる。巻末には音楽エッセイ「響きと灯り」も併録。
『歩道橋シネマ』(初刊:2019年11月)
都市の片隅、旅先、夜の駅、見知らぬホテル——日常と非日常の境に浮かぶ風景を題材にした、ノン・シリーズ(連作を除く)として四冊目の短編集。表題作「歩道橋シネマ」は郷愁と不思議に彩られた一篇。学園のおぞましい秘密を描く「球根」、偶然の光景から物語が立ち上がる「皇居前広場の回転」、ある青年の死をめぐる驚愕の真実が現れる「降っても晴れても」ほか、「線路脇の家」「悪い春」「春の祭典」など計十八篇を収録。
『スキマワラシ』(初刊:2020年8月)
兄・太郎と弟・纐纈散多が営む古道具店。古いものに触れると、それに宿る記憶を「視る」ことができる散多は、ある日、古いタイルからこれまでにないほど強烈なイメージを受け取る。映し出されたのは、幼い頃に亡くした両親の姿だった。タイルと両親にまつわる謎、廃ビルで目撃された「少女」の都市伝説、解体されていく古い名建築——兄弟のひと夏の不思議な旅を描く、ファンタジック・ミステリ長編。
『日曜日は青い蜥蜴』(初刊:2020年11月)
『土曜日は灰色の馬』に続く曜日シリーズの第二弾、約十年ぶりのエッセイ集。「人がすすめない読書案内」「読書日記」「ブラッドベリは死なない」「ひとの原稿は早い…はずだった」の四部で構成され、二〇一一年から二〇一六年ごろの書評と読書日記が中心。少女時代のエピソード、笑える読書日記、真摯で豊かな書評——「ものがたり」を愛する作家の世界を、軽やかな筆致で味わえる一冊。
『灰の劇場』(初刊:2021年2月)
ある朝、新聞のごく短い記事で目に留まった——一九九四年九月二十五日付の記事に、同年四月二十九日、同居する中年女性二人が橋から飛び降り、心中したとあった。その文字を長く心の奥に抱え続けてきた作家「私」は、編集者から記事のコピーを渡されたことを契機に、二人の人物像を想像で描き出していく。「0」「1」「(1)」三つの章が交互に進む実験的構成のなか、現実と虚構、自分自身の人生と書きかけの物語との境界が曖昧になっていく。
『愚かな薔薇 : 上』(初刊:2021年12月)
東北の山あいの集落・磐座にやってきた十四歳の少女・高田奈智。親戚が経営する旅館に滞在し、磐座城を舞台にした二ヶ月の合宿に参加する彼女は、到着翌朝に大量の喀血と身体の異変を経験する。合宿の目的は、星と外宇宙の海へと旅立つ「虚ろ舟乗り」を育てること。十四年にわたる連載を経て完成した、吸血鬼SFの大長編の上巻。
『愚かな薔薇 : 下』(初刊:2021年12月)
「虚ろ舟乗り」へと身体を変容させた少年少女たちは、定期的に他者の血を飲まなければ生きられない不死の身となる。初めて他人の血を口にする儀式「血切り」、銀の杭、そして星の海への旅立ち——。選ばれる者と選ばれぬ者、生き残る者と消えていく者の輪郭が明らかになり、奈智の前にも究極の選択が突きつけられる。SFジュブナイル長編の完結巻。
『月曜日は水玉の犬』(初刊:2022年3月)
『土曜日は灰色の馬』『日曜日は青い蜥蜴』に続く曜日シリーズ第三弾。雑誌書評、文学解説、ベスト3選、映画や美術館のパンフレットへの寄稿など、二〇二一年までに書かれた文章を集成したエッセイ集。ジョン・ファウルズ、エラリー・クイーン、アガサ・クリスティ、リチャード・マシスンらへの愛ある論考のほか、夢や書評、映画についての文章を多数収録。タイトルの「月曜日」も「水玉の犬」も本文には登場しないお茶目さ。
『なんとかしなくちゃ。 : 青雲編』(初刊:2022年11月)
大阪で長く続く老舗海産物問屋の息子を父に、東京の老舗和菓子屋の娘である母を持つ商家の末っ子・梯結子。生まれた一九七〇年から、東京の大学を卒業する一九九三年まで——抜群の観察眼と段取り力を備えた彼女が、混み合う砂場、誕生日会で傷ついた友のプライド、不利な生徒会選挙、城郭愛好研究会での日々など、誰もが諦めかけた局面で「なんとかしなくちゃ」と動いていく。シリーズ第一作「青雲編」。
『鈍色幻視行 上』(初刊:2023年5月)
三たびの映像化が不慮の事故で潰えた“呪われた小説”『夜果つるところ』。その作者・飯合梓と作品の謎を追う小説家・蕗谷梢は、関係者が集う二週間のクルーズに夫・雅春と乗り込む。映画監督の角替、プロデューサーの進藤、元編集者の島崎、漫画家の真鍋姉妹らは、封じてきた記憶を少しずつ語り出す。閉ざされた客船で過去の事故と現在の会話が交錯し、証言が重なるほど、伝説の作家の輪郭はかえって曖昧になる。飯合梓は本当に死んだのか、事故は偶然だったのかという疑問が、取材のたびに濃くなっていく。梢自身の家庭にも影が差すなか、物語に魅入られた人々の秘密が静かにほどけ始める『鈍色幻視行』文庫版上巻。
『鈍色幻視行 下』(初刊:2023年5月)
長い航海のなかで幾人もの証言が積み重なり、梢が追ってきた飯合梓と『夜果つるところ』の謎は、現実と虚構の境目を曇らせていく。撮影現場の事故、失踪した作家、脚本を遺して亡くなった雅春の前妻。断片は互いに響き合い、読み返すたびに別の顔を見せる作中作への違和感が、やがて一行の記憶を照らし始める。誰が何を語り、何を隠したのか。語られなかった沈黙まで意味を帯び、創作に取りつかれた人々の愛と執念が浮かび上がる。真相を求める梢の視線もまた、読者を安全な観察者ではいられなくする。二週間の船旅が終わるとき、物語そのものへの信頼が揺らぐ濃密なミステリ・ロマン、『鈍色幻視行』文庫版完結巻。
『夜果つるところ』(初刊:2023年6月)
遊廓「墜月荘」で暮らす「私」には、三人の母がいた。日がな鳥籠を眺めて過ごす産みの母・和江、身の回りのことを手取り足取り教える育ての母・莢子、無表情で帳場に立つ名義上の母・文子。ある日「私」は、館に出入りする男たち——着流しの笹野、背広姿の子爵、軍服の久我原——の宴会に迷い込む。そこから始まったのは、夥しい血が流れる惨劇だった。『鈍色幻視行』作中作にして謎の作家・飯合梓の唯一の著作が、独立した一冊として読者の前に姿を現す。
『spring』(初刊:2024年3月)
名前のなかにいくつもの季節を抱える、ダンサーにして振付家の天才・萬春。八歳でバレエに出会い、十五歳で海を渡った少年が、踊る者、創る者、見る者、奏でる者として彼のかたわらにあった人々の眼差しを通じて描かれる。憎しみに近い熱量で「舞台の神」を求め続ける一人の天才を、複数の視点から多角的に描く長編ヒューマンドラマ。二〇二五年本屋大賞ノミネート、ページをめくるとダンサーが踊り出すパラパラ漫画も併載。
『珈琲怪談』(初刊:2025年4月)
外科医、検事、作曲家、音楽プロデューサー——多忙な四人の男たちが、京都、横浜、東京、神戸、大阪の珈琲店を渡り歩きながら、それぞれの体験した不思議な話、ぞわりとする話を披露し合う。語り手は音楽プロデューサーの塚崎多聞。コーヒー、紅茶、抹茶の香りとともに紡がれる、日常のすぐ隣に潜む六篇の怪異譚。静かな違和感が立ち上る、塚崎多聞シリーズのカフェ怪談集。
『酒亭DARKNESS』(初刊:2025年8月)
全国各地の居酒屋で、酒の力に背中を押されるように語られる「居酒屋ホラー」十三篇+αの怪談集。老舗居酒屋の三代目が前店主から託された奇妙な条件を巡る「跡継ぎの条件」、オカルトに無縁な男に酒場で訪れたお告げを描く「夜のお告げ」、ユタ一族に伝わる鈴を扱う「風を除ける」、フェーンを警告する祖母の話「曇天の店」など。一杯と一話を交互に味わう、「孤独のグルメ」のホラー版とも評される一冊。
『spring another season』(初刊:2025年12月)
ファンの熱望に応えた『spring』の世界の続編・スピンオフ集。新作中篇「石の花」を含む全十二章で、本編では描かれなかった舞台裏が綴られる。深津、バレエ団のヴァネッサ、ハッサン、フランツ、永遠の師ジャン・ジャメ、教師コンビのエリック・リシャール、ロシア留学経験を持つ滝澤美潮——萬春をめぐる人々それぞれの過去と未来を多面的に描き出す。期間限定公開だったレア・エピソード「反省と改善」も収録された姉妹編。