湊かなえのデビュー作から最新刊まで、全作品を出版順にまとめた完全網羅リストです。「山女日記」などの人気シリーズの読む順番や、長編・短編集などの分類も分かりやすく表示しています。

あわせて読みたい

当サイトで紹介している作家さんは下のリンク先でまとめています。

湊かなえのシリーズ作品一覧

山女日記シリーズ(2作)

  1. 『山女日記』
  2. 『残照の頂 山女日記 続』

湊かなえのノンシリーズ(単発)作品一覧(刊行順)

告白

告白

告白 <双葉文庫>

発売日:2010年4月8日

長編

終業式の日、中学校教師の森口悠子は、生徒たちを前に、校内で亡くなった幼い娘・愛美は事故死ではなく「このクラスの生徒に殺された」と告げる。法では裁き切れない少年たちへ、彼女が仕掛けた静かな復讐。その告白を起点に、級友、加害者、その家族へと語り手が移り、同じ事件の見え方は次々に反転していく。善悪を自分に都合よく塗り替える人々の声が重なるほど、教室に潜んでいた孤独と歪んだ承認欲求が浮かび上がる。誰の言葉を信じ、誰を裁けるのか。冷徹な構成と息詰まる心理描写で、復讐の行方と衝撃の真相へ読者を引きずり込む、第6回本屋大賞受賞のデビュー作。読む者の倫理観まで揺さぶる一冊だ。

少女

少女

少女 <双葉文庫>

発売日:2012年2月16日

長編

高校二年生の由紀と敦子は、転校生が語った「親友の自殺を目撃した」という告白に心を揺さぶられる。由紀は死体ではなく人が死ぬ瞬間を見たいと願い、自殺を考えたことのある敦子は、死を見れば強くなれるのではないかと思う。夏休み、二人はそれぞれ老人ホームと小児科病棟へ向かい、死に近い場所で過ごし始める。しかし胸に秘めた好奇心と恐れは、互いに伏せていた傷、友情のほころび、周囲の人々の思惑と結びつき、思いもよらない方向へ転がっていく。少女たちが求めたのは死の瞬間か、それとも生き直すための答えか。交互の視点がすれ違いながら鮮やかに収束する、危うく切実な青春ミステリー。二人の夏は予想不能な結末へ向かう。

贖罪

贖罪

贖罪 <双葉文庫>

発売日:2012年6月6日

長編

十五年前、静かな田舎町で一人の女児が殺された。直前まで一緒に遊んでいた四人の少女は、犯人と思われる男と話していたのに、なぜかその顔を思い出せない。事件が迷宮入りするなか、娘を失った母は彼女たちへ「犯人を見つけるか、納得できる償いを」と迫る。重い言葉を背負ったまま大人になった四人は、それぞれ異なる形で過去に縛られ、日常の選択を歪められていく。やがて彼女たちの告白が連なるにつれ、罪悪感と恐怖、母の執念が生んだ悲劇の輪郭が浮かび上がる。償いとは誰のために、どこまで続くものなのか。幼い日の記憶から逃れられない者たちを描く、緊迫の連作ミステリー。告白の連鎖が、読む者の心にも重い問いを残す。

Nのために

Nのために

Nのために <双葉文庫>

発売日:2014年8月19日

長編

高級マンションで野口夫妻が殺害され、現場にいた四人のうち西崎真人が逮捕される。十年後、事件を追い続ける元警察官の前で、杉下希美、成瀬慎司、安藤望、西崎という「N」の名を持つ者たちの過去がほどけ始める。瀬戸内の島、古いアパート、窓拭きのゴンドラ――異なる場所で育まれた思いは、誰か一人を守るための計画へと結びついていた。それぞれが差し出した証言は真実の一部を隠し、純粋な願いほど事件を複雑にしていく。最も大切な人を傷つけない方法とは何だったのか。複数の時間と視点が交差し、愛と罪の境界を問いかける切ない純愛ミステリー。すべては「N」のために。守るという行為の痛みが胸に残る一冊。

夜行観覧車

夜行観覧車

夜行観覧車 <双葉文庫>

発売日:2013年1月4日

長編

念願の高級住宅地ひばりヶ丘に家を建てた遠藤家。しかし娘の彩花は受験の失敗と学校での孤立から荒れ、母・真弓へ激しい感情をぶつける。向かいの高橋家は医師の父と優雅な母、優秀な子どもたちに恵まれた理想の一家に見えた。ところがある夜、高橋家の父親が自宅で殺され、家族の一人が姿を消す。事件を境に、二つの家が隠してきた不安、見栄、嫉妬、親子の断絶が次々に露わになっていく。丘の上から街を見下ろす観覧車は、幸福そうな家々の内側で何を見ていたのか。視点が切り替わるたび疑いが揺れ、家族という密室の危うさと再生を描き出す心理ミステリー。崩れかけた家の内側に、なお残る絆を問い直す物語でもある。

往復書簡

往復書簡

往復書簡 <幻冬舎文庫>

発売日:2012年7月30日

短編集

卒業文集、海外からの手紙、教師が残した宿題、かつての仲間への連絡――離れて暮らす人々が交わす言葉だけで、過去の事件や事故の輪郭が少しずつ変わっていく。十年、十五年、二十年という空白を埋めようとする書き手たちは、相手を思いやる一方で、自分に都合のよい記憶や言えなかった秘密も抱えている。返事が届くたび、信じていた関係は揺らぎ、何げない一文の裏から別の真実がのぞく。なぜあの時、あの人はそう行動したのか。顔の見えないやり取りだからこそ深まる緊張と、最後に訪れる感動を味わえる書簡形式の連作ミステリー。映画『北のカナリアたち』原案を含む四編を収録。手紙の余白に潜む感情まで読み解きたくなる一冊。

花の鎖

花の鎖

花の鎖 <文春文庫>

発売日:2013年9月3日

長編

両親を亡くし、祖母の入院と勤務先の破綻で生活に追われる梨花。結婚後も夫の家族との距離に悩む美雪。水彩画を教えながら和菓子店で働く紗月。異なる境遇にある三人の女性の人生には、季節の花、甘い和菓子、山を愛した一人の男、そして「K」と呼ばれる謎の人物が静かに影を落としている。一見別々に進む物語は、愛する人を守りたいという願いと、家族が長く伏せてきた秘密によって少しずつつながっていく。花を贈る行為に込められた思いとは何か。三つの時間が重なったとき、題名の意味と女性たちを結ぶ見えない鎖が姿を現す、温かな余韻と驚きを備えた家族ミステリー。過去から受け継がれた思いの行方が、深い余韻を残す。

境遇

境遇

境遇 <双葉文庫>

発売日:2015年10月15日

長編

ベストセラー絵本『あおぞらリボン』を生んだ陽子と、新聞記者の晴美は、親に捨てられ児童養護施設で育った過去を分かち合う親友同士。ある日、陽子の息子が誘拐され、「真実を公表しなければ命はない」という脅迫状が届く。身代金ではなく、二人にも覚えのない「真実」を要求する犯人。陽子と晴美が少年の行方を追うほど、幼い頃から互いを支えてきた友情と、知らずにいた出生の秘密が揺さぶられていく。同じ境遇だから理解し合えると信じた二人の記憶には、どんな食い違いが潜んでいたのか。母として、友として抱いた愛情と嫉妬が交錯し、過去から届いた問いの正体へ迫るヒューマンサスペンス。誘拐の緊張の奥で、赦しの可能性を問いかける。

サファイア

サファイア

サファイア <ハルキ文庫>

発売日:2022年8月8日

短編集

真珠、ルビー、ダイヤモンド、猫目石、ムーンストーン、サファイア、ガーネット。七つの宝石を題に、恋人、家族、友人たちの胸に秘められた願いと代償を描く短編集。誕生日に初めて指輪をねだった女性、誰かの幸せを願いながら選択を誤る人、思いがけない形で恩を返そうとする人。美しい石は贈る者と受け取る者の間にある愛情、欲望、後悔を映し出し、輝きの裏に隠れた痛みを照らしていく。独立した物語のなかで表題作とその先へ続く一編が響き合い、見えていた出来事の意味も変わっていく。人の悪意だけでなく、祈りや恩返しの連鎖までをすくい取る、切なくも温かな宝石箱のような七編。それぞれの輝きが、読後に新しい色を帯びて心に残る。

白ゆき姫殺人事件

白ゆき姫殺人事件

白ゆき姫殺人事件 <集英社文庫>

発売日:2014年2月20日

長編

化粧品会社の美人社員が、山中で焼け焦げた遺体となって発見された。週刊誌記者の赤星雄治は、同僚や同級生、故郷の人々から聞き取った断片を記事やSNSへ流し、被害者と対照的で地味な同僚女性を「疑惑の人」へ仕立てていく。噂は引用と拡散を重ねるほど断定的になり、善意の証言さえも刺激的な物語の材料へ変わる。しかし、語り手ごとに食い違う記憶の奥には、報道が切り捨てた事実と、誰にも見せなかった感情が潜んでいた。人はなぜ、会ったこともない誰かを裁けるのか。ネット社会の無責任な正義と情報の歪みをあぶり出し、最後まで真実の姿を揺さぶる現代ミステリー。巻末の資料も物語の仕掛けとして読者の判断を試す。

母性

母性

母性 <新潮文庫>

発売日:2015年6月26日

長編

女子高生が自宅の中庭で倒れているのが見つかった。事故か、自殺か、それとも別の理由があるのか。母は「愛能う限り大切に育てた」と語るが、娘の回想から見える家庭は、その言葉だけでは説明できない。十一年前の台風の日、三世代の女たちを包んでいた幸福は突然失われ、母は実母への愛を求め続け、娘もまた母に愛されることを願い続けてきた。同じ出来事を綴る母の手記と娘の記憶は、重なるようで微妙に食い違い、献身と自己犠牲、愛情と支配の境界を揺らしていく。「母性」は生まれながらに備わるものなのか。近すぎる二人の視点が交錯し、家族の真相へ迫る母娘ミステリー。互いを求めながら届かない声が、胸に鋭く響く一冊。

望郷

望郷

望郷 <文春文庫>

発売日:2016年1月4日

短編集

海に囲まれた小さな島で生まれ育った人々は、故郷を愛しながら、その閉塞感やしがらみにも縛られている。島を離れた者、残った者、戻ってきた者。それぞれが家族や友人との過去に向き合うとき、長く胸に沈めていた罪、誤解、失われた人への思いが思いがけない事件となって浮かび上がる。みかん畑、海の星、夢の国、石の十字架――島の風景と暮らしは、逃げたい場所であると同時に、人生の根を張ったかけがえのない場所でもあった。憎しみと懐かしさが同居する「望郷」の正体を、鮮やかな反転と静かな余韻で描く全六編。日本推理作家協会賞短編部門受賞作「海の星」を収録する連作短編集。島の光と影が、一人ひとりの選択を鮮やかに照らし出す。

高校入試

高校入試

高校入試 <角川文庫>

発売日:2016年3月10日

長編

県下有数の公立進学校・橘第一高校。入試前日、教室の黒板に「入試をぶっつぶす!」という文字が残され、ネット掲示板にも不穏な書き込みが現れる。それでも試験は予定どおり始まるが、携帯電話の着信、答案用紙の紛失など、偶然では片づけられない異常が次々に発生する。伝統校への誇りに固執する教師、合格を願う受験生と保護者、母校への複雑な思いを抱く者たち。わずか二日間の校内で、それぞれの正義と秘密がぶつかり合う。誰が、なぜ人生を左右する試験を狙ったのか。掲示板の実況と複数の視点が疑念を増幅させ、教育と選抜の意味を問うノンストップ学校ミステリー。一枚の答案をめぐる混乱が、学校全体を飲み込んでいく。

豆の上で眠る

豆の上で眠る

豆の上で眠る <新潮文庫>

発売日:2017年6月28日

長編

小学一年生の夏、結衣子の二歳上の姉・万佑子が突然姿を消した。必死の捜索もむなしく二年が過ぎ、家族が疲れ果てた頃、姉は遠い町で保護されて帰ってくる。両親は奇跡に喜ぶが、結衣子だけは、目の前の少女に小さな違和感を抱き続けた。癖も好みも姉と同じ。それでも本当に、この人は万佑子なのか。大学生になった結衣子は、封じてきた誘拐の日々と家族の記憶をたどり始める。幼い妹の感覚は思い込みなのか、それとも誰も認めたくない真実への手がかりなのか。家族だからこそ信じたい気持ちと疑う恐怖を、過去と現在の往復から描く、姉妹をめぐる心理ミステリー。小さな違和感が、姉妹の絆と家族の定義を根底から問い直す。

物語のおわり

物語のおわり

物語のおわり <朝日文庫>

発売日:2018年1月4日

長編

妊娠中に病気が見つかった智子、父の死を機に写真家の夢を諦めようとする拓真、内定を得ても自信を持てない綾子、娘の海外行きに反対する水木、仕事一筋で生きてきたあかね。人生の岐路に立つ人々は、それぞれ一人で北海道を旅し、道中で結末の書かれていない小説「空の彼方」を手渡される。山間の町で生まれた少女の夢を綴る物語は、読む者の経験と迷いを映し、想像される「おわり」を変えていく。同じ文章でも、誰がいつ読むかで意味は異なる。紙の束が旅人から旅人へ渡るたび、止まっていた人生が少しずつ動き出す。物語を読む力と選ぶ未来を描く、北海道発の連作長編。結末を想像する行為が、読者自身の現在にも静かに重なる。

絶唱

絶唱

絶唱 <新潮文庫>

発売日:2019年6月26日

長編

大切な人の死に打ちのめされた女性たちがたどり着くのは、南太平洋に浮かぶ島国トンガ。異なる時期にその土地と出会った彼女たちは、喪失を抱えたまま現地の人々の暮らし、祈り、歌、死者との向き合い方に触れていく。遠く離れた島で交わされた約束や言葉は、阪神・淡路大震災の記憶とも結びつき、傷ついた時間を越えて別の誰かへ受け渡される。忘れることも、なかったことにすることもできない悲しみを、人はどう抱えて生きるのか。異国の文化と人の優しさに触れるたび、彼女たちは悲しみを抱えた自分のままで、もう一度歩く力を探していく。「楽園」「約束」「太陽」「絶唱」の四編が響き合い、痛みの奥に残る希望と再生を静かに照らす連作短編集。

リバース

リバース

リバース <講談社文庫>

発売日:2017年3月15日

長編

平凡な会社員・深瀬和久の唯一の取り柄は、おいしいコーヒーを淹れること。ようやくできた恋人のもとへ「深瀬和久は人殺しだ」と告発文が届き、彼は十年前の出来事を語らざるを得なくなる。大学のゼミ仲間と出かけた雪山旅行で、親友の広沢由樹が事故死した。深瀬は自分たちが伏せてきた事実と、広沢について実は何も知らなかったことに気づき、かつての仲間や故郷を訪ねて友の人生をたどり直す。告発者は誰で、何を望んでいるのか。コーヒーの香りとともに蘇る友の記憶は、深瀬に都合のよい自己像まで容赦なく崩していく。善良さの裏に潜む保身と罪悪感が、過去の見え方を少しずつ反転させる。友情と贖罪をめぐる長編ミステリー。

ユートピア

ユートピア

ユートピア <集英社文庫>

発売日:2018年6月21日

長編

太平洋を望む港町・鼻崎町。幼い頃の事故で車椅子生活を送る久美香を応援しようと、陶芸家のすみれは支援ブランドを立ち上げ、仏具店の菜々子ら町の女性たちも協力する。善意から始まった活動は注目を集め、町おこしの希望になるかに見えた。しかしネットに一つの噂が流れると、地元住民と移住者、母親同士の価値観の違いが噴き出し、互いの言葉は疑いへ変わっていく。誰かのためという思いに、自己満足や羨望は混じっていなかったか。閉じた町で絡み合う噂と善意は、一人の少女の未来をも巻き込み、亀裂を広げていく。美しい町で築こうとした理想郷が崩れる過程から、正しさの危うさと人間関係の亀裂を描く緊迫の心理ミステリー。

ポイズンドーター・ホーリーマザー

ポイズンドーター・ホーリーマザー

ポイズンドーター・ホーリーマザー <光文社文庫>

発売日:2018年8月8日

短編集

女優の弓香は故郷の同窓会を断る。今も自分を抑えつける母に会いたくないからだ。だが同級生とのメールで思いがけない訃報を知り、母娘の関係を語る言葉の意味が揺らぎ始める。子を支配する毒親なのか、娘に尽くす聖母なのか――見る側が変われば、人の善意と正しさは鮮やかに反転する。母と娘、姉と妹、友人、恋人など、近しい間柄ほど口にできない嫉妬や期待、「あなたのため」という思い込みを抱えている。二つの視点が対になる表題作をはじめ、関係のずれが招く痛みと驚きを凝縮。誰かを思う気持ちは、どの瞬間に相手を縛る毒へ変わるのか。心の毒が生まれる瞬間を鋭く切り取る全六編の心理ミステリー集。

山猫珈琲 上巻

山猫珈琲 上巻

山猫珈琲 上巻 <双葉文庫>

発売日:2019年12月12日

作家デビュー十周年を迎えた湊かなえが、新聞や雑誌に寄せた文章を中心に、好きな「山」「猫」「珈琲」に励まされてきた日々を綴る初エッセイ集の上巻。故郷の島で育った記憶、家族との暮らし、旅先での出会い、登山の喜び、本や創作への思いなど、小説の緊張感とは異なる率直で温かな素顔がのぞく。何げない出来事をすくい上げる視線からは、作品の種が日常のどこに潜んでいるのかも伝わってくる。新聞連載をはじめ多彩なエッセイに加え、同郷のポルノグラフィティの楽曲をイメージした掌編小説も特別収録。作品を読んできた人なら、意外な原風景を見つける楽しみもある。著者の言葉を身近に味わう『山猫珈琲』上巻。

山猫珈琲 下巻

山猫珈琲 下巻

山猫珈琲 下巻 <双葉文庫>

発売日:2019年12月12日

雑誌に寄せた多彩なエッセイと、シナリオ公募への挑戦から小説家デビューまでを綴る連載を収めた、初エッセイ集の下巻。淡路島での暮らし、家族や旅、愛する山・猫・珈琲、日々の発見を語る文章には、人気作家の飾らない人柄と、物語を生み出す好奇心が息づいている。書き始めたばかりの頃の迷い、選考結果を待つ時間、創作を続ける支えとなった出会いをたどれば、一冊の本が読者へ届くまでの道のりも見えてくる。さらに脚本コンクール受賞作「ラスト・エレベーターガール」「答えは、昼間の月」を特別収録。努力と偶然が重なり、書くことが仕事へ変わる高揚も伝わる。作家誕生の原点に触れる『山猫珈琲』下巻。

未来

未来

未来 <双葉文庫>

発売日:2021年8月5日

長編

父を亡くし、心を閉ざした母と暮らす少女・章子のもとへ、ある日「二十年後のわたし」を名乗る手紙が届く。いたずらを疑いながらも、信じている間は本物だと決めた章子は、未来の自分へ返事を書き始める。学校でのいじめ、母の病気、家族に隠された過去。子どもだけでは抱えきれない出来事が続くなか、手紙は孤独な章子が声を失わずにいるための細い糸となる。やがて彼女の言葉は、同じように助けを求められない少女たちの人生とも交差していく。未来からの手紙は誰が、何のために届けたのか。過酷な現実の連鎖を見つめながら、それでも希望を手放さない人々を描く長編ミステリー。一通ずつ積み重なる声が、暗闇の先を照らしていく。

ブロードキャスト

ブロードキャスト

ブロードキャスト <角川文庫>

発売日:2021年1月22日

長編

中学時代、駅伝で全国大会を目指しながら、あと一歩で夢を逃した町田圭祐。高校でも走り続けるつもりだったが、思いがけない事故をきっかけに陸上競技を諦め、声をかけてきた同級生に導かれて放送部へ入る。発声も機材も番組作りも未知の世界。個性的な仲間と取材を重ねるうち、圭祐は「伝える」ことにも、走るのとは違う熱さがあると知っていく。しかし大会を目指す部員たちの前には、作品の題材、役割分担、過去の挫折をめぐる衝突が待つ。一度失った夢は、別の形でつなぎ直せるのか。言葉を選び、音をつなぎ、仲間と一つの作品を完成させる喜びが胸を熱くする。マイクの向こうへ声を届ける高校生たちを爽やかに描く青春小説。

落日

落日

落日 <ハルキ文庫>

発売日:2022年8月8日

長編

新人脚本家の甲斐真尋は、新進気鋭の映画監督・長谷部香から新作の相談を受ける。題材は、十五年前に真尋の故郷で起きた一家殺害事件。引きこもりの兄が高校生の妹を刺し、家に火を放って両親も死なせたとされ、すでに判決は確定している。なぜ今、この事件を映画にするのか。なぜ無名の真尋が選ばれたのか。二人が町の記憶と関係者の証言をたどるにつれ、報道された「事実」の陰に、被害者も加害者も言葉にできなかった人生が浮かび上がる。真実を知ることは救いになるのか。取材で掘り起こされる記憶は、二人自身の傷にも触れ、閉ざしてきた時間を動かしていく。創作に向き合う二人の女性が、過去の痛みと再生を探る長編ミステリー。

カケラ

カケラ

カケラ <集英社文庫>

発売日:2023年1月20日

長編

美容外科医の橘久乃は、幼なじみの志保から「やせたい」と相談される。対話のなかで話題に上ったのは、かつて太っていた同級生・横網八重子と、その娘・有羽の死だった。明るく運動も得意だった少女は高校二年から学校へ行かなくなり、卒業後、ドーナツが散らばる部屋で亡くなっていたという。久乃は周囲の人々に話を聞くが、有羽の容姿、家庭、幸福を語る証言は少しずつ食い違う。誰もが見た目という一片だけで、彼女の人生を決めつけてはいなかったか。証言が重なるほど、有羽は周囲が貼りつけた評価から離れ、複雑な姿を取り戻していく。美しさへの欲望と善意の暴力を問い、少女が最後に見ていた景色を探る心理ミステリー。

ドキュメント

ドキュメント

ドキュメント <角川文庫>

発売日:2024年6月13日

長編

事故で陸上競技を諦め、放送部で新たな目標を見つけた町田圭祐。三年生の引退後、仲間たちはテレビドキュメント部門の大会に挑み、偶然手に入れたドローンで学校の日常を撮り始める。ところが映像には、煙草を手にした陸上部の逸材・良太が映り込んでいた。事実を伝えるべきか、友人の未来を守るべきか。取材対象との距離、編集によって生まれる印象、仲間への信頼をめぐり、部員たちの意見は割れていく。カメラは真実をそのまま写すのか。映像の力に魅せられた彼らは、現実を切り取り、誰かの人生を変えてしまう怖さにも直面する。伝える責任と青春の選択を、放送コンテストの熱気とミステリーの緊張感で描く学園小説。

湊かなえのことば結び 上

湊かなえのことば結び 上

湊かなえのことば結び 上 <ハルキ文庫>

発売日:2025年5月15日

FM大阪で約二年間放送された人気番組から生まれた一冊。小説家・湊かなえが、リスナーと短編小説を作る企画を楽しみ、愛読書や家族、猫、日々の小さな発見について飾らない言葉で語る。暮らしの拠点である淡路島の牛肉や玉ねぎ、渦潮、人形浄瑠璃といった食と文化の魅力も、島で生活する人ならではの視点で紹介。ラジオだからこそ生まれた近い距離感のなかで、創作の種、言葉を届ける喜び、聞き手との温かなつながりが伝わってくる。声で交わされた時間を文字でたどると、仲間に話しかけられているような心地よさを味わえる。イヤミスの名手の意外な素顔と、物語を愛する心に触れられるトークエッセイ、『湊かなえのことば結び』上巻。

湊かなえのことば結び 下

湊かなえのことば結び 下

湊かなえのことば結び 下 <ハルキ文庫>

発売日:2025年5月15日

FM大阪の番組でリスナーと交わした、二年間の言葉をまとめたトークエッセイの下巻。著者による小説講座や読書会、自作をめぐる話、海外のブックフェア、登山、好きなお菓子やホットサンド、思い出の曲、子ども時代など、話題は創作から暮らしまで自在に広がる。書く仕事の楽しさや迷いを率直に明かし、寄せられた便り一通一通へ真剣に向き合う姿からは、言葉が見知らぬ人同士を仲間へ変えていく力が見えてくる。放送というその場限りの時間を、読み返せる宝物として結び直した珠玉の記録。読むこと、書くこと、語り合うことの楽しさも一冊に結ばれている。作家の声をすぐそばに感じる『湊かなえのことば結び』下巻。

人間標本

人間標本

人間標本 <角川文庫>

発売日:2025年11月21日

長編

蝶を研究する大学教授・榊史朗は、美しいものを最も輝く瞬間のまま残したいと願ってきた。山中で激しく損壊された六人の少年の遺体が見つかり、社会が異様な事件に震えるなか、史朗は息子を含む少年たちを蝶に見立て「人間標本」にしたと独白する。なぜ研究者は越えてはならない一線を越えたのか。彼が残したレポート、少年たちの姿、周囲の証言をたどるほど、告白そのものへの疑いと、親子の間に秘められた願いが膨らんでいく。美を所有することは愛なのか、それとも暴力なのか。蝶の鮮烈な色彩と狂気が入り混じり、読む者の認識を揺さぶる耽美な心理ミステリー。色とりどりの挿絵さえ証拠のように迫り、真相への好奇心を離さない。

ダイヤモンドの原石たちへ 湊かなえ作家15周年記念本

ダイヤモンドの原石たちへ 湊かなえ作家15周年記念本

ダイヤモンドの原石たちへ 湊かなえ作家15周年記念本 <集英社文庫>

発売日:2023年12月20日

『告白』で衝撃的なデビューを飾ってから十五年。湊かなえの作家生活を、長年取材を続けてきたタカザワケンジが多角的にたどる記念本。全小説二十七作の紹介、ロングインタビュー、池田理代子との特別対談、四十七都道府県サイン会ツアー、高校生のための小説甲子園、淡路島での密着取材を通して、人気作家がどのように生まれ、何を支えに走り続けてきたかを描く。さらに短編「一夜十起」と書き下ろし小説「告白のために」も収録。作品世界を振り返りながら、未来の書き手へ向ける眼差しにも触れられる、ファンにも初めて読む人にも格好の作家クロニクル。十五年の創作への熱量が凝縮された決定版の一冊だ。

C線上のアリア

C線上のアリア

C線上のアリア <単行本>

発売日:2025年2月7日

長編

中学生で両親を事故で亡くし、叔母に引き取られた美佐は、山間の町で高校時代を過ごした。それから約三十年。認知症が進んだ叔母の介護のため久しぶりに家へ戻ると、積み重なった物と記憶のなかから、かつて借りたままになっていた一冊の本を見つける。本を返そうと過去をたどる美佐の前に現れるのは、若い日の憧れ、家族の選択、もし別の道を歩んでいたらという「あり得た未来」。現在の介護生活と高校時代の記憶が響き合うとき、見ないふりをしてきた関係の秘密が動き出す。片づける物の一つ一つが叔母の沈黙をほどき、三十年前の物語へ美佐を連れ戻す。老いと家族、選ばなかった人生を見つめる介護ミステリー。

暁星

暁星

暁星 <単行本>

発売日:2025年11月27日

長編

現役の文部科学大臣であり、文壇の大御所でもある清水義之が、全国高校生総合文化祭の式典中に刺殺された。大勢の目の前で凶行に及んだ男は、なぜこの場所、この人物を狙ったのか。事件を起こした永瀬暁の手記と、父である作家が残した著作をたどる物語は、一人の男の半生と、親から子へ受け渡された信念の形へ深く潜っていく。世間が「加害者」と呼ぶ人物を作ったのは、個人の悪意だけなのか。信仰、家族、文学への思いが絡み合い、守りたかったものと傷つけてしまったものの距離が露わになる。白昼の事件から始まる、社会と親子の闇を見据えた長編ミステリー。背後の長い時間を知るほど、最初に抱いた断罪の気持ちは揺らいでいく。

王国

王国

王国 <単行本>

発売日:2026年7月23日

長編

生まれ故郷・白珠湾の海を愛する母と、国際協力の現場で海を守る父を見て育った浜崎朔也。南太平洋の島国で過ごした少年時代と、母から受け継いだ思いを胸に、海洋学部、旅行会社での経験を経て、ウェルネス・ツーリズムの会社「海の王国」を立ち上げる。集まった仲間たちはそれぞれ夢や傷を抱えながら、白珠湾を舞台に人と海を結ぶ未来を思い描く。しかし善意から始まった選択のわずかなずれが、取り返しのつかない出来事へつながっていく。誰も悪人ではないのに、なぜ悲劇は起きたのか。止まった時間を抱える人々の絆と再生を、青く深い海の輝きの中に描く長編ミステリー。海を守る約束は、次の世代へどう受け継がれるのか。