- 黒川博行のシリーズ作品一覧
- 黒川博行のノンシリーズ作品一覧
- 『暗闇のセレナーデ』(初刊:1985年8月)
- 『キャッツアイころがった』(初刊:1986年8月)
- 『大博打』(初刊:1991年12月)
- 『封印』(初刊:1992年12月)
- 『迅雷』(初刊:1995年5月)
- 『カウント・プラン』(初刊:1996年11月)
- 『麻雀放蕩記』(初刊:1997年6月)
- 『よめはんの人類学』(初刊:1998年7月)
- 『燻り』(初刊:1998年9月)
- 『文福茶釜』(初刊:1999年5月)
- 『左手首』(初刊:2002年3月)
- 『ぎゃんぶる考現学 麻雀放蕩記』(初刊:2003年10月)
- 『蒼煌』(初刊:2004年11月)
- 『大阪ばかぼんど ハードボイルド作家のぐうたら日記』(初刊:2008年3月)
- 『蜘蛛の糸』(初刊:2008年6月)
- 『大阪ばかぼんど 夫婦萬歳』(初刊:2008年10月)
- 『煙霞』(初刊:2009年1月)
- 『落英 : 上』(初刊:2013年3月)
- 『落英 : 下』(初刊:2013年3月)
- 『離れ折紙』(初刊:2013年8月)
- 『後妻業』(初刊:2014年8月)
- 『勁草』(初刊:2015年6月)
- 『桃源』(初刊:2019年11月)
- 『騙る』(初刊:2020年12月)
- 『連鎖』(初刊:2022年11月)
- 『悪逆』(初刊:2023年10月)
- 『そらそうや』(初刊:2024年10月)
- 『流砂』(初刊:2026年8月)
黒川博行のシリーズ作品一覧
大阪府警シリーズ(9作)
疫病神シリーズ(7作)
黒川博行のノンシリーズ(単発)作品一覧(刊行順)
『暗闇のセレナーデ』(初刊:1985年8月)
美術大学に通う女子学生は、級友に誘われて訪れた豪邸で、著名な彫刻家に嫁いだ女性がガスの満ちたアトリエに倒れているのを目にする。自殺と片づけられかけたその一件には、いくつもの腑に落ちない点が潜んでいた。密室、偽装、芸術家たちが渦巻く世界――二人の美大生は持ち前の審美眼を武器に、独自に事件の謎へ分け入っていく。関西弁の弾むような会話と、絵画や彫刻の知識をちりばめた本格の趣向。黒川博行の原点を伝える、瑞々しい美術ミステリ。
『キャッツアイころがった』(初刊:1986年8月)
余呉湖で、顔を潰され指を切り取られた身元不明の死体が上がる。唯一の手がかりは、胃から出てきた一粒の宝石キャッツアイだった。やがて美大生、日雇い労働者と犠牲者が続き、いずれも口にキャッツアイが含まれていた。生前、インドへスケッチ旅行に出ると話していた級友の死に疑問を抱いた二人の女子学生は、残されたスケッチブックを頼りに、一路インドへ旅立つ。異国を巡る型破りな追跡行の果てに見えてくるものとは。第4回サントリーミステリー大賞に輝く、黒川博行の出世作。
『大博打』(初刊:1991年12月)
身代金として、金塊二トン――時価三十二億円を要求する、前代未聞の誘拐事件が発生した。警察は震撼するが、犯人の計画は驚くほど緻密だった。大阪湾に停泊させた漁船に金塊を積ませ、オートジャイロを用意させる。無人の船が闇の海を進むが、犯人が奪い取る直前、船はタンカーと衝突して炎上してしまう。なぜ、どうやって――答えの見えないまま、大胆不敵な計画の真価が少しずつ明かされていく。誘拐された老人と犯人の奇妙な交情も味わい深い、痛快サスペンス。
『迅雷』(初刊:1995年5月)
当たり屋の稲垣と、金属回収業の友永。そこへ物言わぬ格闘家ケンを加えた三人組が、大胆不敵にもヤクザの組幹部を誘拐し、身代金をせしめようと企てる。面子をかけて人質を奪い返そうとするヤクザとの駆け引きは、警察署の目前での人質交換、地下駐車場のカーチェイス、組事務所への奇襲へと、ノンストップで突き進んでいく。大阪を舞台に、追いつ追われつの攻防が炸裂する痛快活劇。脇の甘い男たちが交わす地味な友情が、おかしくも温かい。
『燻り』(初刊:1998年9月)
「燻り」とは、うだつの上がらない者、ツキに見放されたチンピラのこと――。盗品を売り捌く骨董屋、パチンコ店の裏データを種に強請りを企む男。関西の裏社会で蠢く小悪党たちが、一攫千金を夢見て騙し騙され、欲をかいてはしっぺ返しを食らう。美味い話には裏がある。そんな苦い真理を、軽妙な関西弁とほのかな怖さで描き出す全九編。人間の欲深さと滑稽さを知り尽くした、黒川博行の犯罪短編集。
『文福茶釜』(初刊:1999年5月)
古美術でひと儲けを企む男たちの騙し合いに、容赦はない。入札目録の図版すり替え、水墨画を薄く剥いで二枚にする「相剥」、ブロンズ像の分割線のごまかし――贋作づくりに知恵を絞る連中の手口を、元美術教師の著者がリアルに描き出す。日本画、茶道具、彫刻、骨董、陶磁器。それぞれの世界を舞台にした全五編の連作集で、欲と狡知が渦巻く古美術界の裏側が鮮やかに暴かれていく。痛快な古美術ミステリの傑作。
『左手首』(初刊:2002年3月)
美人局のはずが、頭の足りない女が呼び込んだヤクザとのもつれへ転がり落ち、ついには消火器が振り下ろされる――表題作をはじめ、解体業者と結んで事故車で荒稼ぎする損保鑑定人の悪知恵など、なにわの裏町で蠢く小悪党たちを描く全七編。もとより堅気とは縁遠い男たちが、性懲りもなく欲をかき、最後はきまってしくじっていく。可笑しくも哀しい犯罪模様を、切れ味鋭い関西弁で綴った短編集。
『ぎゃんぶる考現学 麻雀放蕩記』(初刊:2003年10月)
『蒼煌』(初刊:2004年11月)
日本芸術院の会員の椅子を巡り、京都画壇の二人の日本画家がしのぎを削る。それぞれに選挙参謀がつき、老舗画廊や百貨店の美術部を巻き込んで、現金や高価な茶道具が飛び交う数億円規模の票集めが繰り広げられる。芸術の正当な評価はどこへやら、金と欲にまみれた画壇の暗部があらわになっていく。元美術教師にして直木賞作家が、内側を知る者ならではの筆致で描いた野心作。日本画壇の選挙戦を抉る、ノンストップの一編。
『大阪ばかぼんど ハードボイルド作家のぐうたら日記』(初刊:2008年3月)
ハードボイルド作家を名乗る著者の、脱力きわまる日常を綴ったエッセイ集。「博打に毒され」「恐妻に怯え」「買い物に難儀し」「老いに抗い」と、章立てからして人を食っている。中でも麻雀での派手な負けっぷりは圧巻だ。日本画家である妻との掛け合いは、まるで夫婦漫才の趣。食と金にまつわる独特の感性と、本場関西の笑いとも一味違う文章のおかしみが詰まっている。直木賞作家の素顔がのぞく、抱腹絶倒のぐうたら日記。
『大阪ばかぼんど 夫婦萬歳』(初刊:2008年10月)
ハードボイルド作家が、その飾らない日常をさらけ出すエッセイ集。皮肉と軽口の応酬が止まらない夫婦の会話、残り物のカレーやラーメンで済ます食卓、おびただしい量の茶とコーヒー――。笑いの本場・関西を拠点とする夫妻ならではの、漫才のごとき掛け合いが全編に冴えわたる。妻はれっきとした日本画家にして、絶妙のボケと突っ込みの名手。食と暮らしのおかしみがにじむ、味わい深い随筆集。
『煙霞』(初刊:2009年1月)
正教員の資格を目指す美術講師の熊谷は、音楽教諭の菜穂子とともに、私学助成金の不正受給をネタに女子高の理事長を誘拐し、脅迫を企てる。だが、その裏では、さらに別の思惑を抱いた黒幕が糸を引いていた。騙し合いに次ぐ騙し合い、幾重にも絡み合う陰謀。誰が誰を出し抜くのか、最後まで底が見えない。緊迫と可笑しみを巧みに混ぜ込んだ、黒川博行ならではのクライム・サスペンス長編。
『落英 : 上』(初刊:2013年3月)
大阪府警の万年ヒラ刑事・桐尾と上坂は、覚醒剤密売の捜査中、容疑者宅で思いがけないものを見つける。それは、十六年前に和歌山で起きた銀行副頭取射殺事件――迷宮入りした難事件で使われた、中国製トカレフだった。二人は拳銃の出所を追う専従捜査に入り、かつてその事件を担当した和歌山県警の刑事と出会う。だが、その男には裏の顔があった。軽妙な関西弁が彩る、上下巻の警察小説、その前半。
『落英 : 下』(初刊:2013年3月)
発見されたトカレフを巡り、桐尾と上坂は、悪徳刑事の思惑に絡め取られていく。その男は、かつて事件の犯人と目された暴力団幹部に、同じ拳銃を売りつけよと持ちかけてきたのだ。迷宮入りした射殺事件の真相と、警察の内に巣食う闇。二人のヒラ刑事は、危うい綱渡りの果てに何を掴むのか。裏社会と組織の論理に翻弄されながら突き進む、骨太の警察小説。その白熱の後半戦。
『離れ折紙』(初刊:2013年8月)
古ぼけた掛軸や抹茶碗も、ひとたび「本物」と鑑定されれば数百万、数千万円に化ける。アール・ヌーヴォーの工芸、日本刀、浮世絵、日本画――京都・大阪の美術骨董の世界を舞台に、人間の尽きせぬ欲望をあぶり出すコンゲーム連作。題名の「離れ折紙」とは、品物と切り離され、鑑定書だけが独り歩きした状態を指す。登場人物や舞台が緩やかに重なり合う全六編。元美術教師の著者が腕によりをかけた、美術ミステリの逸品。
『後妻業』(初刊:2014年8月)
九十一歳の資産家・耕造は、妻に先立たれた後、六十九歳の小夜子を後妻に迎えていた。だが小夜子の正体は、結婚相談所の柏木と結託し、資産家の老人に取り入っては財産を奪い取る「後妻業」の女だった。耕造が倒れたのを機に、小夜子は着々と預金や株を現金へと変えていく。色仕掛けで老人を喰いものにする裏稼業の、戦慄すべき手口と実態。のちに映画化・ドラマ化もされた、黒川博行渾身の犯罪小説。
『勁草』(初刊:2015年6月)
橋岡は、「名簿屋」と呼ばれる男に雇われていた。オレオレ詐欺の標的となる老人のリストを作り、被害者から金を受け取る「受け子」を手配する――それが彼の裏稼業だ。騙し取った金の大半は、元締めへと吸い上げられていく。賭場で借金を抱えた橋岡は、いっそう危うい綱渡りへ足を踏み入れる。一方、府警の特殊詐欺班も捜査の手を伸ばし始めていた。風雪に耐える草の名を冠した、特殊詐欺の実態に切り込む犯罪小説。
『桃源』(初刊:2019年11月)
沖縄の互助組織「模合」で集めた仲間の金六百万円を持ち逃げした男の行方を、大阪府警泉尾署の刑事・新垣と上坂が追う。逃げ込んだ先は、故郷の沖縄らしい。二人が辿り着いたのは、近海に沈む中国船から美術品を引き揚げるという、壮大なトレジャーハントを騙る出資詐欺だった。沖縄の名物に舌鼓を打ちながら、逃亡者と詐欺の謎を追う凸凹コンビ。著者が三十年ぶりに放つ、ストレートな警察小説。
『騙る』(初刊:2020年12月)
大物彫刻家が遺した縮小模型、素人の蔵から出た重文級の屏風、デッドストックのヴィンテージ・アロハ――古美術業界の「掘り出し物」に群がる、欲深い人びとが騙し騙される。主人公は、美術雑誌の編集長を務める小狡い男・佐保。屏風や唐墨、古裂など、扱う品を変えながら繰り広げられる丁々発止のコンゲーム全六編。元美術教師ならではの精緻な美術知識に裏打ちされた、著者十八番の美術ミステリ連作集。
『連鎖』(初刊:2022年11月)
失踪した食品会社社長の遺体が、高速道路の非常駐車帯に停められた車内で見つかった。手形の不渡りを苦にした自殺か――。大阪・京橋署暴犯係の上坂と礒野は、地道な聞き込みで捜査を始める。社長を巡る人間関係、巨額の保険金、そして手形の行方。もつれ合った糸を一本ずつほぐすうち、いくつもの事件が鎖のように繋がっていく。軽妙な関西弁の刑事コンビが活躍する、骨太の警察小説。
『悪逆』(初刊:2023年10月)
周到な計画のもと、強盗殺人を重ねていく男がいた。狙われるのは、士業詐欺やマルチ商法で荒稼ぎした悪党ばかり。大阪府警捜査一課の舘野と、箕面北署のベテラン刑事・玉川は、広告代理店の元経営者殺害事件を追ううち、次々と起こる不可解な死に直面する。手口の違いから別々の事件に見えた殺人の連なり。捜査網はじわじわと縮まっていくが――。最後の最後まで結末の見えない、緊迫のクライム・サスペンス。
『そらそうや』(初刊:2024年10月)
麻雀に将棋、競輪・競馬、そして株。長年たしなんできた賭け事の数々、愛するオカメインコや庭の生きものたちとの日々、さらには自作の解説まで――。デビューから四十年に及ぶ作家生活を、飾らない筆で振り返るエッセイ集。「デビューまで」「作家的日常」「交遊録」などの章立てで、直木賞作家の歩みと素顔が綴られていく。巻末には東野圭吾との対談も収録。味わい深く、どこか可笑しい一冊。
『流砂』(初刊:2026年8月)
匿名・流動型犯罪、通称「トクリュウ」。闇バイトの受け子として利用される宗教二世、事件のたびに姿を消す指示役、組織を守るヤクザ――弱者をためらいなく踏みにじりながら、離合集散を繰り返す犯罪者たちが新たな獲物を狙う。実体をつかませない組織に対し、刑事たちは一粒の砂ほどのわずかな痕跡を拾い、執念の捜査でその網をたぐり寄せていく。誰が命令し、誰が利益を得て、使い捨てられた者はどこへ消えるのか。追う者と追われる者の息詰まる攻防は、やがて壮絶な逃走劇へ。身近な暮らしに忍び寄る現代犯罪の恐怖と、そこに巻き込まれた人々の生を描き、犯罪の構造だけでなく人間の弱さと執念をあぶり出すクライム・サスペンス。